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トマトの「ソバージュ栽培(R)」

全国各地への広がり

前回は、東日本大震災の復興支援として、太平洋沿岸の震災地域に向けた、ミニトマトの露地夏秋どり栽培の新栽培法「ソバージュ栽培(R)」(以下、ソバージュ)の普及と新たな取り組みについて紹介した。今回は、ソバージュの普及と新たな取り組みについて、全国各地の事例を、パイオニアエコサイエンス(株)(以下、パイオニアエコサイエンス)の各地域の営業担当者に紹介していただいた。

1 東北各地に広がる新たな取り組み

忘れもしない2007年の夏、秋田県横手市実験農場の破れたハウスの片隅に、露地同然の状況ですくすく育っていた「シシリアンルージュ」(パイオニアエコサイエンス)の樹があった。そこから始まったトマトの露地夏秋どり栽培という新たな栽培法の開発への挑戦と試行錯誤の日々。そのときには、誰が今日のソバージュの普及状況を予想しただろう。10年には、NHK総合テレビの「クローズアップ現代」にも取り上げられ、ソバージュは徐々に話題となっていった。
秋田県のソバージュは、11年以降、横手市実験農場(写真(1)(2)、以下丸囲み数字は写真番号)を核に、JA秋田ふるさと(3)(4)でも本格的に栽培が始まり、「シシリアンルージュ」のトマトジュースが商品化された(5)。16年現在、ソバージュは「ロッソナポリタン」(パイオニアエコサイエンス)が主流となり、青果用として首都圏に広く流通している。
秋田県横手市実験農場から始まったソバージュは、山形県や宮城県にも広がり、山形県ではJA山形(6)、宮城県ではJA仙台(7)を中心に普及し、東北各地にソバージュの産地が次々に誕生していった。また、岩手県では、岩手県農業研究センターの本連載第2回の報告どおり、東日本大震災の復興支援の新品目として太平洋沿岸の震災地域へのソバージュの導入に取り組み、生産現場に普及し始めている(8)。もちろん、個人農家単位でも、東北各地で栽培され始めている(9)。
ただし、ソバージュは、露地栽培の宿命として、天候不順の影響をもろに受ける。近年は、ゲリラ豪雨や猛暑が増え、年によっては長雨による寡日照などが問題となっている。とくに今年は、大型の台風10号が1951年の統計開始以降初めて東北の太平洋沿岸部へ直接上陸し、加えて、近年まれにみる日照不足と長雨……最近の異常気象は、これでもかこれでもかと容赦がない。
しかし、生産者のなかには、今年のような天候でもしっかりと収益を上げ、次作に闘志を燃やされる方もいらっしゃる。自然には勝てないが、自然から学んだことを次作に活かし、ソバージュをさらに進化させていくことが、私たちの役割であると考える。(東日本事業所 松永邦則)

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