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トマトの「ソバージュ栽培(R)」

全国各地への広がり


(北海道事業所 三浦信一)

3 西日本各地に広がる取り組み

西日本では、日本国内の温暖地を中心に広がっているトマトの重要病害である黄化葉巻病の蔓延や、梅雨時には1日当たり100mm以上を記録するような降水量だけでなく、大型台風の襲来も多い。そのため、当初は西日本地域へのソバージュの導入は不可能であると考えていた。
ところが、12年の大分県玖珠町における「サンマルツァーノリゼルバ」の露地雨よけ夏秋どり栽培による成功事例をきっかけに、まずは九州地域からソバージュの試験栽培が始まり、13年には同玖珠町において「シシリアンルージュ」が1株当たり約13kg、10a当たりに換算すると6.5tという高収量を達成し(19)、同時期同地域の高冷地におけるハウス栽培の平均収量(6~7t)を超える可能性が出てきた。
さらに15年には、長崎県農林技術開発センター(諫早市)において、「サンマルツァーノリゼルバ」を用いて1株当たり22kg以上、10a当たりに換算すると10t以上が収穫できた(20)。
九州地域でも、ソバージュの高収量の可能性が示されたことにより、ソバージュは西日本各地に急速に広がり始め、14年3月に兵庫県神戸市でパイオニアエコサイエンス(株)西日本事業所が中心となって企画したイベント「畑DEマウロの地中海トマト」をはじめとする西日本各地における栽培セミナー(21)やFacebookの「トマトのソバージュ栽培を考える会」といったSNSの活用(22)などによって、ソバージュの栽培技術や、収穫物の直売所および飲食店への販売方法だけにとどまらず、ソバージュの収穫体験イベント(23)や加工品の活用などについても、活発に情報交換が行なわれるようになっていった。
たとえば、兵庫県丹波市では、ソバージュの収穫体験とそのトマトを使ったレストランでの飲食イベント(24)、京都府与謝野町では、トマトソースの加工品づくりといった地域活性化につながる動きも出てきている。また、島根県邑南町の石見東小学校では、小学生が校内の畑でソバージュに取り組み(25)(26)、滋賀県草津市のJA草津市では、地元の幼稚園児がソバージュの収穫体験を行なうなど、ソバージュを食育活動に活かす事例も出てきている。
15年11月には、ソバージュの活用方法を競うイベントとして「キングオブソバージュ」を兵庫県神戸市で開催し、生産者だけでなく、青果流通業や飲食業などの関係者や消費者とも積極的に交流していくことにより、栽培だけにとどまらない新しい農食文化の創造を目指している。さらに、ソバージュは、できるだけ農薬を使わないような病害虫対策や使われなくなった古いハウスの活用などの新しい取り組みも始まっている。   (西日本事業所 永田裕)

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