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土門「辛」聞

全農・株式会社化で発射した「安倍ミサイル」の威力

全農・株式会社化で、ついに安倍晋三首相自らが、これに反対する全農・農協族議員の制圧に乗り出した。11月7日、政府・規制改革推進会議の全体会合に出席した安倍首相が、全農に株式会社化の実行を強く迫り、応じない場合は全農を「解体」処分にすると宣言したのだ。
「全農改革は農業の構造改革の試金石であり、新しい組織に全農が生まれ変わるつもりで、その事業方式、組織体制を刷新していただきたい」
株式会社への転換を求めたのは「事業方式、組織体制を刷新」という部分。この問題で安倍首相がここまで踏み込んで発言したのは初めて。それまでは全農の自主性に期待する立場から官邸・農水省サイドから積極的に働きかけることはなかった。その期待もむなしく、全農は執拗な抵抗活動を繰り広げてきた。そんな全農に対し、ついに安倍首相の堪忍袋の緒が切れたのである。

全中前会長が交わした
官邸・農水省との「密約」

全農・株式会社化について官邸・農水省が、その実施について全農の自主判断を尊重する方針は、この4月施行の改正農協法の「全農がその選択により、株式会社に組織変更できる」という規定に反映されている。ただ全中には、問題となる株式会社化について「既定路線」という趣旨のメッセージを伝え、全中もそれに理解を示していたようだ。つまり官邸・農水省と全中との間で「密約」が成立していたというのである。
官邸・農水省は、次期通常国会に農業産業力強化法を提出予定だ。これとの関係で、株式会社化の実現は、官邸・農水省にとって前提条件となるので、そういう形で「既定路線」にしていたのだ。
「密約」の存在については、双方が頑強に否定している。官邸・農水省にとっては、全農の自主判断に期待する立場からだ。一方、全中にとっては、その存在が明らかになると全農から厳しく批判を受け、場合によっては賦課金(会費)や幹部人事などで報復されると恐れたからだ。
ところが露見してしまった。昨年4月8日というから、政府が農協法改正案を閣議決定、国会に提出してから5日目のことだった。全農・成清一臣理事長が記者を相手に、「わざわざ近々に株式会社化を検討することはしない」(4月8日付け産経新聞)と発言。「近々に」という表現から、全中が官邸・農水省と「密約」を交わしていたことを前提にした発言のように受け取れる。
全農が、その「密約」を察知したのは、その前日(同7日)。政府が農協法改正案を国会に提出したことを受けて、当時の全中会長だった萬歳章氏が安倍首相や菅義偉官房長官と会談した。会談直後の記者会見で萬歳氏が口にしたコメントだ。
「政府の農協改革と同じ方向で自己改革を進める」(同9日付けロイター)

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