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特集

ルポに登場したあの人はいま(1)

本誌の巻頭で取り上げている「新・農業経営者ルポ」は今号で150回を数えた。つまり、150人の農業経営者を紹介したことになる。その誌面では(取材当時の)現在に至る過程や将来の展望が語られている。あのときはこう言っていたが、いまはどうなったのか。読者ならずとも気になるところである。周囲を取り巻く環境の変化を先取りしたり、はたまた路線変更したりと、その後の展開は十人十色だろう。そんな彼らの動きに突撃取材するのがこの企画である。1回限りではなく、今後も不定期で掲載していくことにしている。 文/平井ゆか

八丈島発の国産榊ネットワークが
全国に拡大

八丈島で榊を生産する奥山完己氏は、本誌2011年7月号の新・農業経営者ルポ「『国産』ブランド榊の大逆襲プラン。」として登場した。榊は日本の神事に欠かせないにもかかわらず、1990年代から中国産が国内シェアのほとんどを占めてきた。そこに待ったをかけた奥山氏の「逆襲」はいま、八丈島から全国に飛び火し、大きなうねりとなりつつある。

「中国産榊に比べ、国産の榊の流通量は限られている。だから本物の榊の良さを知る人が少ない。そこにビジネスチャンスがある」
奥山氏が力を入れてきたのは、品質の良い国産榊の存在感を高めることと、生産者がつながることで安定的に供給することだった。
ルポでも伝えたように、奥山氏のスタイルは、1本ずつ値段をつけて販売する1本売りである。中国産は、主に1対(2束)もしくは1束という単位で販売されている。1本売りというのは菊やバラなら当たり前のことだが、榊の市場にとっては画期的なことだったのである。この1本売りは、品質の高さで勝負した結果、奥山氏の榊のブランディングにつながることになった。
また、奥山氏は安定供給を目指し、2009年に「国産榊生産者の会」を立ち上げた。産地間連携による安定供給を目指すとともに、生産者が互いに栽培技術などについて情報交換をするためだ。当初は、埼玉、千葉、静岡、石川、鹿児島、和歌山、三宅島など10人ほどの榊生産者たちだったが、いまではその輪が大きく広がっている。

【1本売りによって本物の品質に目覚めた市場】

奥山氏の八丈榊の出荷先は、生花市場と、(株)オークネットである。生花市場は、盛岡生花、仙台生花、大田花きの3市場に限定している。オークネットは、市場法の網を被らない花市場である。インターネットを活用した商物分離の仕組みで、会員は在宅で購入でき、北海道から沖縄まで950を超える買参人の元にはセリ日の翌日に配達される。榊はこれらの市場から生花店などを経由し、神棚に祀る一般家庭や商店、会社、神事に用いる神社や葬儀関係業界などへと行き渡っている。
従来の目方売りから現在の1本売りに変えたのは01年のことだ。きっかけは、パソコンの導入により静岡の(株)久花園との情報交換が始まったことだ。当時社長を務めていた石原博氏からこんなアドバイスを受けた。

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