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特集

ルポに登場したあの人はいま(1)


「これからは目方売りではなく、本数売りの時代だ」
1本の枝の長さ45cmからの出荷が始まりだった。長さのニーズは、取引先である都道18県のそれぞれ地域ごとに異なる。現在の仕分けサイズは25cm~1mの間で9サイズとなっている。
八丈島で奥山氏が作る八丈榊はヒサカキと呼ばれる種類だ。ヒサカキは西日本では仏花の裏当てや仏花として用いられ、東日本では神棚に祀られる。
奥山氏の八丈榊を購入した生花店では、来店した客がすぐに神棚に祀ることができるように、束ねたり作り榊にしたりして店頭に並べたりするほか、1本ずつ販売するケースもあるという。
奥山氏と長年取引しているオークネットの高市秀行氏は1本売りについて次のように語る。
「いまでも従来の束売りで買うお客様も多いですが、奥山さんの1本売りというスタイルに共感して多くの固定客がついたんだと思います。この1本売りはほかでも広がってきています」
掲載後も、奥山氏は各地の生花店を回ったり、東京都の高田馬場にあるスーパーマーケットを継続して観察したりしている。そこで店の売り方や、店に来るお客さんの買い方を見ているのだ。榊は、1対(2束)で販売されるものが主流だったが近年、生花店によってはビニールの包装に、枝を2本または3本入れての販売も増えている。また、1束だけ購入し、お客さん自身がアレンジして祀るスタイルも増えてきている。
1本売りは見た目の善し悪しがもろに表れる。その厳しさにさらされながら品質に磨きをかけたことが、奥山氏の八丈榊の地位を築くことになった。
八丈榊の見た目の美しさは、葉が艶やかで濃い緑色をしていることと、肉厚であることだという。また、供えたときに、緑色が濃い色をした葉の表側が見えるように、枝についた葉が同じ側を向いていることも必須だ。高市氏はこう続ける。
「とくに奥山さんの八丈榊は、葉が大きめですき間なく密集しているので、後ろが透けません。それが見栄えにも影響しています。こうした品質は、温暖で雨が多い気候と、水はけの良い火山灰の土壌に恵まれた八丈島ならではのものですが、それだけではありません。何年もかけて品質の良い八丈榊の苗を引き継いで作り上げたものでもあります」
奥山氏によると、一番手間がかかるのは病害虫防除と雑草対策だという。八丈島の気候の影響でとにかく虫がつく。ハマキムシやゾウムシ、カイガラムシ、蛾の幼虫、さらにバッタがバリバリと食べてしまうため、被害を最小限にとどめるよう必要な対策を取っている。

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