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特集

ルポに登場したあの人はいま(1)


じつは、反収を上げようと思えば方法はある。林氏は創業以来、ずっと温度や水、二酸化炭素の数値を記録して活用してきた。その数値を活用して効率よく生産する方法はある。
しかし、効率だけを上げようとすると肉厚で糖度の高いパプリカはできなくなってしまう。生産効率の面から考えるとロスになるような、水を減らしたり温度を急激に下げたりするなどのストレスを与えることによって、品質の良いパプリカが実るのである。
輸入品の場合、流通過程で色づくことを加味し、6~7分程度の熟度で収穫している。この方法を用いると、樹の負担が少なく、次の収穫までの展開が早まるという。
「でもそれをやってしまうと輸入品と変わらない品質になってしまい、国産の意味が薄れてしまいます。高い品質を維持しながら収量を上げるための加減をどうするかが難しいのでせめぎ合いですね。数値化したことをどう活かすか、その精度を上げていきたいと思います」
反収を上げることのほかに、もうひとつ取り組んでいるのが、従業員の作業効率を上げることである。パート従業員は時給制なので、作業効率が上がれば、当然、人件費も下がる。
「よく見ると、作業能率には個人差があります。たくさん仕事をこなすことができる人、一生懸命作業した人を評価できる仕組みを整えようとしているところです」

【個人客に直接販売するルートを増やす】

現在の主な販売ルートは、前述のカット野菜の工場、地域密着型の生鮮スーパー、そして全農を通じた市場である。大手量販店よりも地域密着型の生鮮スーパーのほうが良い取引ができるという。
現在、個人客への直接販売ルートづくりに力を入れている。14年には自社生産のパプリカ専門の直売所を始めた。流通に乗せると、生産者の手元に入るのは末端価格の半分になる。もし顧客に直接販売できれば、従来の取引価格よりも利益率が上がると考えてのことだ。直売所から地方発送の注文をするお客様もいるという。
加えてインターネット通販も始める予定だ。直売所やインターネット通販など直接販売で、当面、総出荷量の5%以上を達成できるように準備を進めている。
「おかげさまで、おいしいという評価をいただき、近隣からたくさんのお客様にお越しいただいています。地道ですがお客様は増えています。1000ケースご購入する1軒よりも、2、3ケースをご購入する300軒のお客様とのお付き合いを大切にしたいと思っています」
息子に任せて自分はもう退場してもいいころと言いつつも、次世代に引き継ぐまでに、まだまだやらなければならないこと、やりたいことが多いようだ。

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