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特集

ルポに登場したあの人はいま(1)



【生物多様性を理解してもらうため、健康に良い食を提案】

風評被害を乗り越えつつある杉山氏は、すでに次にやるべき仕事を見据えている。農業が生物多様性を復活させることと、そんな環境が人間の健康を維持するのに役に立つことを、生産者はもちろん、流通、消費者までみんなに共通の理解を持ってもらうことである。
「たとえば、お米はおおげつひめの目から生まれた穀物であり、目を中心とする粘膜を作るために、そして肌の潤い成分を作り、それ以外が糖質として使用されます。一方、温かいご飯は急激に血糖値を上げやすいことが体の負担になっています。じつは、冷えたご飯こそが、レジスタントスターチという難消化性でんぷんの状態で大腸までたどり着くので、血糖値が上がりにくく大腸に棲んでいる腸内細菌の貴重な食糧となるんです。また、玄米や小麦の表皮や胚芽は、大腸で腸内細菌との協働作業によって短鎖脂肪酸を生み出します。これは脳のエネルギーと脳細胞の原料になります。つまり、玄米に近い状態で冷やして食べると、脳細胞の原料になり、脳のエネルギーになり、そしてガンの予防ができます」
生物多様性を理解してもらうには時間がかかる。そこで、まず食べ物から変えてもらおうと考えている。杉山氏が言うように、たしかに食べ物の安全性について理解している人は少ない。自身がアトピー性皮膚炎になった経験から、農薬や食品添加物がじわじわと蓄積されることへの警鐘を鳴らしたいのだという。それは作物を作る立場だからこそ、健康を維持するための提案ができると考えている。
「私たちは、生物多様性のなかの農業で生まれた人間の健康に良いお米だからこそ、それを作る側として、より健康を維持するのに役立つ食べ方をしてほしいと思っています。そういった提案は、私一人ではできません。食のあり方の提案を含めて、流通を作っていきたいと思います。一方的に提案するのではなく、みなさんと一緒に良い食生活を探しませんかという場を作りたいと思っています」

すぎやま農場
杉山修一(すぎやま しゅういち)
(栃木県塩谷町)
1958年、栃木県今市市生まれ。77年、栃木県立宇都宮農業高校(現・宇都宮白楊)卒業後、父の後を継ぎ就農。経営面積は43haで、小麦や大豆などの有機栽培10ha、特別栽培米23ha、飼料用米10haを手がける。

収益性のある施設栽培の経営を次世代につなぐ

パプリカは、もともとオランダ産や韓国産などの輸入品として日本の食卓に広まった。まだ存在自体が珍しかったパプリカ市場に、あえて国産品で切り込んだのが林俊秀氏である。本誌に登場した2007年は、規模拡大のために新たな投資をしたころだった。安価な輸入品との競争にさらされながら、施設栽培で収益を得る経営を模索し、次世代に引き継ごうとしている。

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