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【実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!】
農地と投資とコストの話(1)農地取り引きの基礎知識
- 齊藤義崇
- 第25回 2017年01月05日
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北海道とそう変わらない
2016年11月にイタリアへ出かけてきた。ボローニャで開催された農業機械展の帰り道、ミラノ近郊の農家レストランに立ち寄った。出迎えてくれた石造りの建物は古民家だった。中に入ると太く味のある柱とむき出しの梁、薪が燃える暖炉が落ち着いた雰囲気を醸し出していてオシャレに感じた。オーナーは農家だが、レストラン運営の全般は料理長に任されているという。
牛飼いの私は防疫上近づけなかったが、敷地内には家畜がいて、野菜の直売所、テラス、さらにはスパ(温泉)まで併設されていた。農場で収穫したブドウで醸造したというワインを片手に、店員さんたち曰く“現地のイタリア人より陽気に”食事を楽しんできた。
イタリア北部ではこうしたレストランを手がける農家経営スタイルは珍しくないそうだ。あの手この手を使って利益を上げ、農業経営を成り立たせていこうという姿勢に刺激を受けた。
イタリアの国土は、おもにヨーロッパの半島部分、シチリア島、サルディーニャ島からなる。国土面積は、日本の約37万よりやや狭い約30万。北部にアルプス山脈がそびえ、ミラノ周辺から北側では一年を通じて降水があるが、半島部は夏に雨が少ない地中海性気候である。国土に占める平地の割合は少ないが、丘陵や山岳地も農耕地として利用され、農用地は45%と日本の12%をはるかに上回る。
イタリア農業で特筆すべき点は、日本のスーパーの店頭にも並ぶワイン、チーズ、オリーブオイル、トマトの加工品が輸出額で世界の上位に位置していることと、有機農業が盛んなことである。しかし、データによれば農家1戸当たりの平均経営面積は約12haという。
移動中に車窓からポー川とその周辺を眺めることができた。この辺りはかんがいエリアでコメ作りに適しているそうだ。収穫後の水田では稲ワラ集めが行なわれ、生えそろった麦畑や牧草ロール、倉庫や農舎の風景からも大規模農業という印象は受けなかった。稲株を見る限り3m幅で播種して、汎用コンバインで収穫していると予測がついた。納屋に並んでいるのは長らく使い古した農業機械ばかりだった。
実際に訪れたイタリア北部の圃場や農場は、日本とくに我が地元の北海道の農村風景とそう変わらなかったのだ。漠然と若いころから抱いてきた「西洋の農業=広大な農地で大規模な経営」という先入観はいとも簡単に打ち砕かれ、まさに百聞は一見にしかずである。
旅から帰ってきて考えたことに規模拡大のテーマがある。日本の農業界には、長らく農地を拡大し経営規模拡大するべきだという風潮があった。かつては私も賛同してその政策推進の一端を担ってきた。しかし、かれこれ約20年が経過し、農場1戸当たりの耕作規模は拡大したものの、日本経済における農業経営の状態や取り巻く農村経済は発展したように感じない。
イタリア北部ではこうしたレストランを手がける農家経営スタイルは珍しくないそうだ。あの手この手を使って利益を上げ、農業経営を成り立たせていこうという姿勢に刺激を受けた。
イタリアの国土は、おもにヨーロッパの半島部分、シチリア島、サルディーニャ島からなる。国土面積は、日本の約37万よりやや狭い約30万。北部にアルプス山脈がそびえ、ミラノ周辺から北側では一年を通じて降水があるが、半島部は夏に雨が少ない地中海性気候である。国土に占める平地の割合は少ないが、丘陵や山岳地も農耕地として利用され、農用地は45%と日本の12%をはるかに上回る。
イタリア農業で特筆すべき点は、日本のスーパーの店頭にも並ぶワイン、チーズ、オリーブオイル、トマトの加工品が輸出額で世界の上位に位置していることと、有機農業が盛んなことである。しかし、データによれば農家1戸当たりの平均経営面積は約12haという。
移動中に車窓からポー川とその周辺を眺めることができた。この辺りはかんがいエリアでコメ作りに適しているそうだ。収穫後の水田では稲ワラ集めが行なわれ、生えそろった麦畑や牧草ロール、倉庫や農舎の風景からも大規模農業という印象は受けなかった。稲株を見る限り3m幅で播種して、汎用コンバインで収穫していると予測がついた。納屋に並んでいるのは長らく使い古した農業機械ばかりだった。
実際に訪れたイタリア北部の圃場や農場は、日本とくに我が地元の北海道の農村風景とそう変わらなかったのだ。漠然と若いころから抱いてきた「西洋の農業=広大な農地で大規模な経営」という先入観はいとも簡単に打ち砕かれ、まさに百聞は一見にしかずである。
規模拡大の本音と建前
旅から帰ってきて考えたことに規模拡大のテーマがある。日本の農業界には、長らく農地を拡大し経営規模拡大するべきだという風潮があった。かつては私も賛同してその政策推進の一端を担ってきた。しかし、かれこれ約20年が経過し、農場1戸当たりの耕作規模は拡大したものの、日本経済における農業経営の状態や取り巻く農村経済は発展したように感じない。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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