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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

農地と投資とコストの話(1)農地取り引きの基礎知識


二つ目は農地を賃借して規模拡大する方法である。無難かつ柔軟な規模拡大法といえるだろう。理由は経営が厳しくなった場合、契約年数に制限があるものの、返却すればよいからである。賃借料(小作料とも呼ばれる)は全額費用に計上できるのも特徴だ。規模拡大をしたときの利益目標も小作料を基準に設定すればよい。欠点は、あくまでも賃借であるから、売買取得と違って各種権利設定ができないことである。つまり、規模拡大したらその分の運転資金が必要となるので、無担保の信用貸しが金融機関からしてもらえるように経営計画をより詰めておかなければならない。
三つ目に農作業の受委託を挙げてみたい。地域の事情にもよるが、私はこれが最も手堅い規模拡大手法だと考えている。理由は作業を受託することで受託料金が収入となり、その利益を見込むことで自己の経営規模以上に機械や施設の導入を効率よく進めることができるからである。自作地から上がってくる利益だけで機械投資をするよりも、高性能な機械や大型の設備を手に入れることも可能だ。また、すでに作業が困難であるということは、将来的にその農地を手放す可能性が高い。その前に作業料をもらいながら農地のクセを知ったり、作業動線の効率を上げる策を練ったり、未来を見据えた準備を始められる点でも手堅いといえる。欠点は作業が下手で委託農家に迷惑をかけるなど地域からの信頼を得られなかったり、政策動向により受託契約が突然破棄されたりと、予定通りに稼働面積を確保できない場合は、過剰投資となることである。
この3つの方法の詳細は次号から順に解説していきたいと思う。

農地に関する用語解説

今回は、農地への投資を考える前に帳簿の数字から少し離れて、農地に関係する用語を再確認しておこうと思う。法律、関係機関、政策などをざっくばらんに挙げてみた。
【農地法】 戦後にGHQが農林省に命じてつくられた法律で、のちの池田首相が与党自由党や農林省の反対を押し切る形で1952年に成立させた。この法制化と農地改革により農家の零細構造が固定化されたため、農村の保守化を促した法律とも揶揄されている。この法律の目的は食糧の安定供給の確保である。農地および採草放牧地は貴重な資源で、耕作者が所有する役割も重要なので、この法律で定めたもの以外は農地の所有も賃貸もできない。農地には所有権、質権、使用貸借権、賃借権などが設定され、その権利を移転しようとするときには農業委員会の許可を得なければならない。許可を得ない契約はすべて無効とされる。

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