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トマトの「ソバージュ栽培(R)」

調理用マーケット開拓の可能性


イベントや対面販売をした際、調理用トマトの食べ方を説明しても、家で加熱調理することを手間に感じ、生食用を手にする人が多かったことから、言葉より体験で感じてもらえる場を作ったのだという。
筆者の現場でも、バーベキューとの相性を実感することがあった。信州バーベキュー協会と本格バーベキュー講座を担当したところ、調理用トマトを使用した「イタリアン風焼きトマト」がさまざまな試食の中で最も人気を集めたのだ。調理用トマトは、ゼリー分が少なく、流れ出にくいため、半分に割って断面から焼き、返して皮面に焦げ目をつけ、バジルペーストとチーズをトッピングすることも可能である(写真(7))。
手軽さと見た目の美しさ、そして調理用トマトの食味の良さに驚きの声が集中し、「調理用トマトはどこで買えるのか?」などの質問が後を絶たなかった。バーべキュー用トマトとして、アウトドア愛好者やレジャーシーズンに提案すると、楽しい記憶とともに、調理用トマトの魅力が波及していくのではないだろうか。

5 飲食店との連携
調理人にアピール

消費拡大のためには、調理用トマトを多用するイタリア料理店を中心とした飲食店との連携も必須になるだろう。バブル景気の到来と重なる1980年代後半から開店ラッシュとなったイタリア料理店は、その後も一定数増え続けている(図(3))。
新品種や「ソバージュ栽培」の普及により、食味の良い調理用トマトが安定供給できるようになりつつある今こそ、用途を知る料理人への訴求を強化する時期と言える。実際、16年に300本の調理用トマトを栽培した兵庫県の鎌塚農園では、販路を飲食店に絞り、大量に使いやすい価格設定での提案を行ない、手応えを感じているという。

6 日本食との融合で
世界へアピール

最後に「出し汁になる野菜」としての側面にも触れておきたい。世界無形文化遺産への登録をきっかけに「和食」、そして日本ならではの味覚である「旨み」への注目が高まっている。
昆布と同じ旨み成分であるグルタミン酸を多く含む調理用トマトはまさに「出し汁になる野菜」とも言える。出し汁は組み合わせることで、旨みの相乗効果が期待できるため、和食との融合も増えている。トマトの煮浸しやトマトおでんがいい例だろう。
日本が誇る旨み・出し汁である昆布やかつお節、干しシイタケに調理用トマトが加わったら面白い。今後は、調理用トマトを日本の新たな食文化として、その価値を提案していくべきではないだろうか。

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