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じつは選挙結果の決定要因は候補者と有権者のやりとりだけだ。あとは、メディアもふくめて副次的なものに過ぎず、選挙の影響因子にはなっても決定因子にはなりえない。日本の報道は米国の選挙へ与える影響はゼロなので、見る意味は全くない。
予備選の結果や候補者の発言や有権者の反応については現地に行かずともネットで見られる。共和党予備選の結果を見ると、共和党に入れた候補者が数百万人単位で多かった。本選でこれをくつがえす変動要因がなければ、トランプが勝つものと予想された。
浅川氏は現地取材を行なっているが、その期間は1週間に満たない。決定因子にかかわる取材が必要なのは激戦州だけであり、影響因子についてはシンクタンクへの取材をすればよい。メディアはシンクタンクをチェックしているし、候補者の政策の原案をつくるのもシンクタンクだからだ。これだけでトランプの勝利と、だいたいの最終獲得票数までわかったという。とてもシンプルである。しかし、メディアも「識者」もこのシンプルな手続きをすら怠っていたというわけだ。
貴族主義への違和感が
トランプ勝利の鍵
今回の選挙は、クリントンかトランプかというよりも、オバマ体制の存続か阻止かが鍵だった、と浅川氏はいう。クリントンは基本的にオバマ政治の存続をめざしていた。しかし、それに否と唱える米国人が大幅に増加した。
オバマ政治の本質は社会主義革命にある。あらゆる生活の細部に政府が介入し、規制を増やし、政府にたよる人間を増やす。金融業界から多額の献金を受けとる一方、債務は増大し、生活保護費は倍増し、農務省をはじめ役所は肥大化した。移民は増え、そこに投じられる予算はかさむ一方で、米国本来の独立自尊の精神で生きている人たちの生活は締め付けられてきた。それがオバマ政権下の米国の現実の一面だった。
オバマ政権が国民よりも政府を重んじる方向性をとってきたのに対して、トランプは、国民を政府よりも重んじると主張した。また、オバマ政権下ではけっして口にできなかった移民問題を正面から取りあげ、過激な物言いでその問題点を指摘することで、多くの米国人の賛意を得た。トランプは米国に一番重きを置いた上でのチェンジを志向する。
個人的に興味深かったのは、レディ・ガガやハリウッドの俳優などのセレブや有名人の多くがクリントンを支持し、トランプを嫌悪する発言をしていたことについての浅川氏のコメントだった。
浅川氏によれば、オバマ=クリントンがレディ・ガガのような有名人をひきつけるのはそこに貴族主義があるからだという。貴族は困っている人たちにはやさしい。そうした貴族主義のシンボルとして有名人やセレブを位置づける。それが民主党のやり方だった。
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田中真知 タナカマチ
作家・翻訳家
1960年東京生まれ。作家・翻訳家。1990年より1997年までエジプト在住。著書に『アフリカ旅物語』(北東部編・中南部編、凱風社)『ある夜、ピラミッドで』(旅行人)、訳書にグラハム・ハンコック『神の刻印』(凱風社)、『惑星の暗号』(翔泳社)など。
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