ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

ルポに登場したあの人はいま(2)【東北編】


もちろん、その理由の一つは福島原発事故の影響である。販売価格は下げざるを得なくなった。それよりも経営を圧迫したのは3年連続の不作である。ひとめぼれと特別栽培米コシヒカリを合わせ、平均収量540kg/10aを目標にしている。しかしこの3年間、平均収量は420kg/10aに落ち込んだ。
「14年から16年まで3年間不作が続きました。コンバインをいくら走らせても籾が貯まらないといった感覚でした。こんなことは30年間で初めてです。93年の大凶作の年ですら500kg/10aだったのに。不作が2年続くと、資金不足で投資ができなくなります。3年続くと、明日払うお金はどうしようという状況になるんですよ」
原因は天候不順である。14、15年度産は、出穂期前に暑く、出穂後は低温で日照不足だったせいだ。16年度産は、田植え後に水不足だったせいである。梅雨に入ってもほとんど雨が降らず、会津では初めて8月末に37℃を記録した。9月の登熟期には一転、雨と低温・日照不足が続いた。
なかでもひとめぼれを播いた圃場はもともと条件が良くなかった。天候が良い年は問題なかったが、条件の悪い圃場ほど天候不順に弱く収量が落ちやすい。ひとめぼれは約300kg/10aまで落ち、これが平均収量に響いた。なんとか収量を上げようとすると肥培管理に時間が取られ、圃場全体の生産効率が落ちてしまうため、そこにばかり構っていられない。
「我々は、花粉のできる減数分裂期や出穂期に、低温に耐える技術は持っています。でも暑すぎることに対する技術は持っていません。田んぼを冷ますことはできないのでね。これには困っちゃいました」

【生産から物流、販売まで対策に乗り出す】

「会社は銀行からもJAからもお金を借りられないので、実際には自分と女房の通帳から借りている状態です。娘からも借りています。今年は家族の貯金も足りなくなって、JAから購入した会社の資材代支払いを待ってもらっています。ついに『払えないものは、払えません』と言えるようになりました。はっはっはっ」
新國氏が少し余裕の表情を見せるのは、すでにあらゆる対策を考えてあるからだ。何か大きな転換を図るのではなく、一つひとつ足元から固めていくやり方である。
一つめとして、まずは生産体制を整える。今年は条件の悪い圃場7haを解約し、新たに条件の良い圃場6haを借りることにした。
二つめは、本来の直売の形を取り戻し、無駄な出費を抑えることだ。グリーンサービスは直売しているコメが多い。これまで出荷前のコメは地元のJAの倉庫を借りて保管していた。もちろん、検査料と倉庫料、入出庫料、手数料を支払って借りる。ところが、16年に地元のJAが合併すると、系統外の生産者がJAの倉庫を借りるためにはある条件が設けられた。一旦、JAにコメを販売し、全農から相対価格で仕入れるという手順を踏まなければならなくなったのだ。16年度産はJAの合併前よりも1俵当たり約800円の手数料を上乗せしなければならなかった。これは痛い。

関連記事

powered by weblio