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特集

ルポに登場したあの人はいま(2)【東北編】


「渡辺さんには、掲載前にお会いしたことがあったので、お電話しようと思ったら、先方からかかってきました」
さっそく渡辺氏のアドバイスを受け、同年9月、「お米社債」を発行し始めた。「お米社債」とは、少人数私募債という金融庁が監督する仕組みを使った社債である。1口20万円で、会社側は年に2回、49口まで発行することができる。万一のときは、元本も保証されないし現金の配当もないが、代わりに1口につきコメ10kgをプレゼントするというものだ。
当初、「お米社債」の応募者は友人や知人など十数名だけだった。2年ほど経ったとき、朝日新聞の関東版の夕刊に掲載された。すると、200人以上から問い合わせがあり、抽選で応募者を選ばなければならないほどになった。その後もNHKで紹介され、120口にまで増えた。原発事故が起きた11年には落ち込むが、翌12年に再び朝日新聞の一面に社説扱いで記事が掲載されると、数字を戻し、現在もほぼ同数で推移している。
この「お米社債」は単なる資金集めではない。プレゼントの10kgはいわば試食品のようなものだ。「お米社債」を持っている人たちの約半数が現在、定期購入の顧客になっている。
「原発事故直後、あるお客様からFAXが届きました。『私はなんにも心配していません。ずっと新國さんのお米を食べ続けますから』。これが私の精神的支えになっています。もはや単なるお客様ではなく、ファンであり、応援団ですね。『お米社債』を持っている地元の人たちの応援もあります。『俺は株主だからな。ちゃんと米とっているのか』って言われるのが励みになっています」
新國氏は、いまでも変わらず顧客でいてくれる、まるで信奉者のようなファンがいることのありがたみをかみ締めている。

【100年後もこの地で農業を続ける会社に】

最後に、新國氏は100年後も農業を続けられる会社のあり方について語ってくれた。100年後を漠然と語る会社は多いが、新國氏の経営理念の解説を見せてもらって驚いた。理念に込められた意味がこと細かに解説されている。息子などに社長を譲るにあたり、きちんと言葉で残しておくべきだと考えたのだという。
新國氏は約400年前に城持ち侍から帰農した新國家の18代目である。息子に社長を譲った、次の代に確実に農業と会社が継がれたことを見届け、経営とは何かを伝えたいのだろう。
「きちんと経営理念を持ち、目標に向かって歩んでいけば、私たちの会社は100年後も農業の会社でいられると思います。そのときにはアジアの農業を元気にする会社になっていると思います。いまの社員たちにも、100年後の社員たちにも、社員で良かった、農業者で良かった、と誇りを持てる人であってほしいと思います」

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