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特集

ルポに登場したあの人はいま(2)【東北編】


100年後もこの会社がこの地で農業を続けているという夢があり、100年後へ農業を引き継いでいく役割は、いまの自分たちが担うのだという自負が新國氏の強さの源である。        (平井ゆか)

お客様に
安心してもらえる農地を後世に残す

福島県大玉村で(有)農作業互助会を経営する鈴木博之氏(67)は、自分たちが作ったコメや機能性米を使った団子を自信と誇りを持って販売してきた。そこに福島第一原子力発電所の事故が起きる。鈴木氏はお客様に伝える言葉を失った。その後、7人の専業農家とともに、東京電力を相手に農地の「原状回復」を求める裁判を起こしている。訴えに至るまでの葛藤と、訴えに込める思いを聞いた。

(有)農作業互助会
代表取締役
鈴木 博之
(福島県大玉村)
プロフィール
1950年、福島県生まれ。76年、機械の共同利用と作業請負を行なう任意団体を設立。84年、農作業互助会を法人化する。88年、債務清算のため、資産が競売に掛けられそうになるが、農協を訴え、裁判所の和解勧告を得て危機を脱する。
事業内容は、コメの生産・集荷・小売、餅・団子などの加工・店頭販売。現在はコメの小売が主体。作付面積(自作地・借地)は約13haで、作業請負が5haになる。

鈴木氏が誌面に登場したのは9年前の2008年。ちょうど団子を販売する自社店舗「お米工房ままや」を開店したばかりだった。
鈴木氏が営む農作業互助会は、コメの生産から集荷、精米、小売までを手がける会社である。商標登録したコシヒカリの「安達太良のしずく」をはじめ、低タンパクの機能米である「春陽」や「LGCソフト」を生産している。低タンパク米は、コメに含まれるタンパク質のうち、消化されやすいグルテリンが少ないという特性があり、ダイエットや慢性腎不全患者の食事療法に有効だとされている。「お米工房ままや」の団子は「LGCソフト」で作ったものだ。低タンパク米の性質に低アミロース米の性質が加えられているので、もちもちした食感があり、団子を作るのにも向いている。まさに付加価値商品としてのブランドを築き上げてきた。
鈴木氏は、理論に基づいた商品に自信と誇りを持っていた。そして何よりも、おいしいと言って買ってくれるお客様、機能性を知って買ってくれるお客様がいることが鈴木氏の喜びだった。

【お客様に心から「安全です」と言い切れない】

福島第一原発の事故(以下、原発事故)の後、お客様からの信頼が崩れた。

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