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特集

ルポに登場したあの人はいま(2)【東北編】



【多収品種を育成するための部品】

部品の一つは「直立穂型の稲」だ。直立穂型とは、まるで麦のように穂が立ったまま、首を垂れないことを指す。このタイプの稲は穂だけでなく葉も直立している。そのため、太陽光が下の葉まで行きわたる。結果的に光合成が活発になり、多収に結びつくとされる。
平塚氏は自分の田で見つけた突然変異体がこの直立穂型だった。これを、茎が太くて丈夫な稲を掛け合わせた稲を持っている。
もう一つの部品は「株が開く稲」だ。このタイプの稲は初期除草剤を散布すれば、葉が広がって地面を覆い隠すので、その後の雑草対策がほぼ要らなくなる。おまけに葉を横に大きく広げることで、光合成が活発になる。
この二つの部品を掛け合わせることで超多収の品種を育成する――。これが平塚氏の人生をかけた大仕事である。
ではどの程度の収量を目標にしているのかと質問すると、「20俵」というから驚いた。「もちろん夢だけどね」と平塚氏。ただ、詳しく聞いてみると、あながち夢でもなさそうである。
昭和の初めごろ、島根県西田村(現・出雲市)の農家・佐々木伊太郎は「北部2号」の選抜系で10a当たりの収量にして八石四斗、1260kgを挙げている。つまり21俵だ。
肝心なのは、この北部2号の選抜系が半矮性遺伝子を持つ稲だった可能性が高い点だ。半矮性遺伝子を持つ稲は稈長が短くなり、収量を増やせる。
平塚氏が部品として持っている「直立穂型の稲」は、まさしくこの遺伝子を持っている。この時点では「北部2号」の選別系と同じである。ただ、平塚氏はこの稲に、さらに「株が横に大きく広がる稲」を付け加えようとしている。実現すれば20俵どころか、それ以上の収量が取れるかもしれないという夢が膨らんでくるわけだ。
じつは平塚氏が「直立穂型の稲」の稲を育成したのはいまから30年前の話。東日本大震災という大変な苦難に見舞われながらも、若き日に見た夢をひたすらにかなえようとするその生き方に感動を覚えた。(窪田新之助)

家族で生産・加工・販売
を分社化する経営へ

前回の(有)鶴岡協同ファームの取材から10年が経った。夫婦2人でひた走ってきた五十嵐一雄氏(51)と明子さん(49)夫妻に、新たに強い味方が現れた。長男の勝馬氏(25)と長女の蘭さん(21)である。子供たちを早く独立させてやりたいものの、親も引退するには早すぎる現役バリバリの歳だ。この後継者問題を解決するために考えたのが分社化という方法だった。

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