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特集

ルポに登場したあの人はいま(2)【東北編】



(有)鶴岡協同ファーム
代表取締役
五十嵐 一雄
(山形県鶴岡市)
プロフィール
1965年、山形県鶴岡市生まれ。地元の工業高校を卒業後、86年から米国で農業研修。88年に帰国後、就農。94年、特別栽培米制度を利用し、コメの直販を開始。2003年、妻・明子さんと(有)鶴岡協同ファームを設立。経営面積約30ha、コメの作付面積24ha、ネギのハウス100坪×5棟。年商約6,500万円。

五十嵐一雄氏が代表取締役を務める鶴岡協同ファームは、庄内平野の南部、鶴岡市民田区で、コメとネギを生産している。コメは特別栽培米で、直売を始めたころからのなじみの顧客が多い。寿司屋や焼肉屋などの飲食店や老人ホームのほか、インターネット通販による個人客もいる。
一雄氏は高校を卒業したてのころ、農業を営む父の後を継ぐつもりはなかった。しかし20歳のとき、たまたま米国の農業研修生募集を目にすると、面白そうだという軽い気持ちで応募して米国に渡った。ワシントン州やオレゴン州で農業体験を積むうち、当時の日本では考えられなかった「自分で値をつける農業」に可能性を見いだす。帰国前に両親に農業を継ぐ意志を伝えると、帰国後に父の下でコメとだだちゃ豆を作る農業を始めた。だが、日本で始めた農業は米国で夢見た経営とはほど遠いものだった。
1993年に起きたコメの大凶作が奇しくも一雄氏の転機となる。翌年、特別栽培米に切り替えると、コメを求める市場への直売に乗り出した。これこそ一雄氏がずっとやりたかった「自分で値をつける農業」である。2003年には、妻の明子さんと「協同」の鶴岡協同ファームを立ち上げる。同年、地元の名産、民田ナスの生産を始め、「民田ナスのからし漬け」の加工と販売も手がけるようになった。
10年前の取材時、一雄氏は規模拡大を志していると話していた。その言葉どおり、コメの販路を広げ、地域から水田を預かり面積を拡大しつつある。

【コメの規模拡大の壁との奮闘】

一雄氏は、農業を始めたころから規模拡大を目指してきた。しかし、コメを直売している生産者が水田面積を増やすのはなかなか大変だ。また、生産調整も経営の足かせとなっている。
「高齢で農業を辞める人は多いですよ。辞める人はまずJAに相談しますよね。私はJAへの出荷がゼロなので、待っていても話が来るはずがありません」
そこで一雄氏は、農業を辞めるときには自分に土地を預けてくれるよう、近隣の生産者に声かけをしているという。長期にわたる地道な活動である。

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