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イベントレポート

第2回稲作コスト低減シンポジウム


質疑応答の際に飼料米(つぶゆたか)の生産費を問われた佐藤氏は「1俵当たり約6000円」と答えた。多収品種を選んだうえで、「直播のほうが移植に比べて収量は下がるが所得は上がる」と自信をのぞかせる一方で、飼料米の現物価格では赤字の経営が助成で成り立っていることへの不安感も口にしていた。中山間に位置する集落の存続と経営の発展という課題には「ゴムのように柔軟な考えを持たないと」と締めていた。

経営データを見える化し
理想の経営者像を追う

最後に登壇したのは(株)夢ファーム代表取締役の奥山孝明氏だ。「ICTで挑戦! 農業経営の『見える化』」と題して、一つのシステムで圃場管理と経営管理を実現する取り組みについて紹介した。
農研機構の作業計画管理支援システム(PMS)を08年度から使用しているが、会計システムとの連携がなく、両方のシステムに入力する手間を削減したいと考えたのが開発の動機である。14年度に(株)ルークシステムと共同で応募した(PMS)活用コンソーシアムが農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業に採択され、バーコードリーダーを使った一元管理システムの構築を実現した。
ソフトウェアやアプリケーション技術の進化に伴い、いまでは高額の投資をしなくても「自分の知りたいものを自分でつくれる」ようになったと述べつつ、無料のアプリケーションで経営データをグラフ化した事例を紹介した。
「経営に関するデータをグラフにしてみると、自分のイメージと違うなと思うことが結構あるんです。そこに気づいて、(経営を)ステップアップしていけたらいいなと思います」と語りつつ、経営管理を推し進めるなかで、余ったキャッシュを地代として地主さんに返すことのできる経営者を目指していると力強く語っていた。

5本の講演と質疑応答を終えて感じたのは、稲作コスト低減という課題は、営農における生産費の削減に留まらないという当たり前のことである。乾田直播や畑作技術体系を導入するだけでは足りず、集落の信頼を得ながら、機械や資材の調達・利用に工夫を凝らしたり、ICTを活用するなどして経営管理の数字を見つめたりと、課題解決のアプローチは複雑に絡み合っている。しかし、情報技術の進化のおかげでマーケットの情報が得やすくなり、コスト低減にも取り組みやすくなっているのも事実である。来場者のなかに現場で奮闘する農業経営者が少なかったのは残念だが、後押しする助成や仕組みをいかに利用するか。それを問われていることは間違いなさそうだ。 (加藤祐子)

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