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新・農業経営者ルポ

キタアカリやトヨシロを生んだ元育種家の父の教えを守り、ひたすらおいしさだけを追求


一方の栽培は、少量多品目路線を継続することに加え、主に3つの教えがあった。
「まずは畑には極力入らない。とくに雨上がりはダメということです。
次は施肥量を抑えることです。ウチは有機栽培ではありません。この件をめぐっては親父と妻とでこんなやりとりがありました。
『有機肥料を使ったらいいんじゃないですか?』(妻)
『それなら本州へ行くか!』(親父)
親父には寒い北海道と温暖な鹿児島や外国の経験があります。千歳の春は気温も地温も低い状態ですので、有機肥料を施しても土壌微生物が分解するまで時間がかかるんですね。作物をきちんと作るには初期生育が重要ということで、化学肥料を少なめに用いてきました。
最後は化学農薬を必要以上に散布しないことです。
農法には特段のこだわりはありません。結果的においしければそれでよしというスタンスです。全体を通して、作物の生育は人間がちょっと助けるだけという思想が背景にあります」
それから10年の月日が流れた。

自分マーケティングの
少量多品目栽培が功を奏す

「おかげさまで売り上げはどんどん伸びています。最近はお客さんから足りないと言われるくらいです。初年度はひどかったんですけど、いまはそのときの3倍近くになりました」
拓と妻・泰子のファーム・ウメムラは規模を拡大していない。じつは営業もこれまでしたためしがないという。
「営業はしないといけないと常々思っているんですけど、現状では一つもできていません。幸い、ウチのお客さんは飲食店やホテルが中心で、結構横のつながりが強いものですから、ご紹介していただけるんです。急に新規のお客さんからお電話が入ると、『○○さんから聞いたんですけど、ウチにも売ってください』みたいな具合ですね。お客さんが畑までお越しになって、『シェフの友人を連れてきました』なんてこともあります」
取引先を一度つかんだら離さず、逆に増やしてこられた遠因には芳樹の影響力が少なからず働いているだろう。だが、それだけでこうも進展するものなのかとの疑念が頭をもたげる。取材を進めていると、どうやらその謎は70前後に達する少量多品目栽培に隠されているような気がした。
「70というとなんでもかんでも作っているイメージがあると思いますけど、珍しいという理由で採用したものはありません。自分が親父と作っておいしいと感じたものを小さいお子さんや一般家庭でも食べていただきたい。それが基本ですね。70のうち、約7割は親父の代から残しているものです。追加したものでも自分がおいしいと納得したかどうかを基準にしています」

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