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農業共済組合はご存じのとおり、基本的には市区町村の区域ごとに設けられており、管轄区域内の農家が組合員になって運営している。名目は「農業災害補償は、農業者が不慮の事故によって受ける事のある損失を補填して農業経営の安定をはかり、農業生産力の発展に資することを目的とする」とされており、災害で受ける損害を補填するために昭和22年12月の農業災害補償法の制定とともに発足したものが農業共済制度である。
一方で、 農業共済組合や共済事業を行なう市町村は、事業の実施の強制や当然に加入(当然加入)しなければならず、また当然加入によって組合員となった農家は、耕作面積が一定規模以上であれば米と麦に関して加入が義務づけられている。平成27年の加入戸数は農作物共済合計で約149万戸(うち:水稲144万戸、麦4万戸)、加入面積は約173万ha(うち:水稲146万ha、麦27万ha)で、同年の水稲作付面積約150万ha、麦27万haのため、98%の圃場が共済組合に加入している。一定規模に満たない加入が任意である圃場もあることを考慮すると、ほぼ100%加入しているといえる。
対象となる自然災害は、風水害、干害、冷害、雪害、その他気象上の原因(地震、噴火を含む)による災害、火災、病虫害、鳥獣害など複合的に補償されている。家畜共済に関しては、家畜の死亡、廃用、疾病、傷害など幅広くカバーされている。
共済金は年間で約1000億円程度支払われており、冷害の発生した平成5年には5500億円に上った。約50%は国からの助成でまかなわれている。
農業災害補償制度の見直しと
収入保険制度の導入
現在の農業災害補償制度の見直しが平成28年に公表された。見直し項目は、(1)農業災害補償制度における農作物共済(米、麦)の当然加入制から任意加入制へ移行、(2)一筆方式等の引受方式の廃止、(3)果樹の特定危険方式・園芸施設の短期加入の廃止、(4)畑作物・果樹の補償割合の複数選択、(5)家畜共済(死廃と病傷共済の分離、事故発生時の資産価値で補償、期首に飼養計画申告・期末に掛金調整方法、1件ごとから年間の共済金支払が一定基準を超えた場合に支払い、初診料を含めた診察費全体に一定の自己負担、共済加入者間で取引された家畜は2週間以内でも請求可、家畜商経由でも対象)、(6)危険段階別の掛金率を導入、(7)無事戻しの廃止、(8)農業共済団体が新たに設立する全国組織にて効率化を図る。
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紀平真理子 キヒラマリコ
1985年、愛知県生まれ。2011年、オランダへ移住し、食や農業に関するリサーチ、本誌や馬鈴薯専門誌『ポテカル』への寄稿を開始。2016年、オランダVan Hall Larenstein University of Applied Sciences農村開発コミュニケーション修士卒業。同年10月に帰国し、農業関連記事執筆やイベントコーディネート、海外資材導入コーディネート、研修・トレーニング、その他農業関連事業サポートを行なうmaru communicateを立ち上げる。今年9月、世界の離乳食をテーマにした『FOOD&BABY 世界の赤ちゃんとたべもの』を発行。食の6次産業化プロデューサーレベル3認定、日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。
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