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図2は転炉スラグと炭カルとでそれぞれ酸性改良した土による3作連続のポット栽培試験の結果である。転炉スラグ施用区は炭カル区に比べて顕著なpH持続効果が認められた。このように転炉スラグを土壌酸性改良資材として利用すると、pHを7.5以上に高めても、作物は微量要素欠乏をきたさず、既存の石灰資材より酸性改良の持続効果に優れる。
4.根こぶ病やフザリウムの
病害対策にも役立つ
全国の野菜産地では、さまざまな土壌病害に苦しめられている。なかでも、ホウレンソウ萎凋病などのフザリウム病害やウリ科ホモプシス根腐病、ネギやニンニクの黒腐菌核病などの糸状菌(カビ)を病原菌とする土壌病害、アブラナ科野菜根こぶ病は、土のpHを高めると発病を抑制できることが知られている。転炉スラグを施用してpHを7.5程度に高めると発病軽減効果が得られ、少なくとも5年以上は持続する。最近では、細菌病であるトマト青枯病にも有効なことが確認されている。ただし、ジャガイモのそうか病については発病を助長する。
土壌病害対策としての施用量は10a当たり数tに達することもあり、転炉スラグの施用によって酸性改良した土壌を元に戻すことは至難の業で、注意を要する。転炉スラグを施用すると、アルカリ効果により可給態窒素が増加し、キャベツやスイカ、メロンの玉割れが生じたり、水稲では倒伏するおそれがある。施用後最初の作付け時には窒素施肥量を削減するか無窒素とする。
土壌病害対策のほかにも既存の石灰資材として利用することも有効である。その場合は、pHを6.0~6.5に改良する。施用量は既存石灰資材と同様に緩衝能曲線から求める。
なお、市販されている転炉スラグには粉状品と粒状品がある。粒状品は散布しやすいが、土の中でほとんど崩壊しないため酸性改良効果が著しく劣る。土壌酸性改良を目的とする場合には、必ず粉状品を使うようにしてほしい。
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後藤逸男 ゴトウイツオ
東京農業大学 名誉教授
全国土の会 会長
1950年生まれ。東京農業大学大学院修士課程を修了後、同大学の助手を経て95年より教授に就任し、2015年3月まで教鞭を執る。土壌学および肥料学を専門分野とし、農業生産現場に密着した実践的土壌学を目指す。89年に農家のための土と肥料の研究会「全国土の会」を立ち上げ、野菜・花き生産地の土壌診断と施肥改善対策の普及に尽力し続けている。現在は東京農業大学名誉教授、 全国土の会会長。
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