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一方の生産費は、直接的経費の約4万円/10aを5haに換算すると、約200万円、加えて小作料2万円/10aが5ha分として100万円、合わせて約300万円増加すると計算できる。増えた粗収益500万円から差し引くと、約200万円の利益増が見込めることとなる。
今回の試算では新たな投資をしないことを条件に挙げたが、設備投資なしに規模拡大するには限界がある。実際には、より作業幅の広い作業機を導入したり、見合ったトラクターを増車したりと費用はより膨らむからだ。また、直接的経費が増えれば運転資金もより必要となる。それらをどのように調達するかも経営者の手腕を問われる点である。
最後に、水稲の旬別労働時間をグラフにした(図4)。北海道での移植体系と乾田直播の10a当たりの標準的な値である。合計時間は移植体系で14.6時間、乾田直播で8.7時間と約6時間の開きがある。とくに育苗に労働の大半を割く4~5月は乾田直播の倍である。5haの規模拡大をした場合は、この期間だけで375時間の労働が増えるため、人員を工面できるかどうかも検討事項に入れておこう。
農地を賃借する方法を「無難かつ柔軟な規模拡大法」と紹介したが、最近の傾向では、規模拡大時に経営安定対策の品目に安直に流れがちである。選択の理由には労働時間が少なく、所得が安定するというメリットが挙がるだろう。理想としては、規模拡大をするならば、品代の収支で利益を整えていきたいものである。
財務諸表以外の経営データがないと、より具体的なシミュレーシ結果は出せない。日頃から部門別の経理を行ない、損益計算書から作物データが拾えること。直接的経費を含む技術体系が整理されていること。この2つが必要条件となる。小作料と利益を天秤にかけ、利益増大の戦略を練った上で面積拡大を実行に移す。少しでも根拠を持ち、自信をつけて規模拡大に臨むべきである。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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