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ここで集荷と出荷をするのは通常の葉物野菜や根菜類、そして何よりも同社にとって成長のけん引役となっているベビーリーフである。ベビーリーフといえば今や大抵のスーパーに置いてある商材だ。レストランでサラダを頼めば、レタスやミズナ、ルッコラやホウレンソウなどの幼葉が色とりどりに散らしてあるのを目にする。食卓に彩りを与えるだけでなく、栄養価も豊富。発芽直後の新芽は種の栄養素だけで育つため、亜鉛や鉄、カリウムなどのミネラル分が多く含まれている。
ベビーリーフ市場は
6倍になる余地あり
ベビーリーフは約20年前に国内に導入されてから、多くの農家が作り始めたが、二強はほぼ固まっている。西の雄はカゴメやトヨタ、三井物産などの出資を受けている果実堂(熊本県益城町)であるとすれば、東の雄はHATAKEカンパニーといっていいだろう。
しかも、その伸びしろは多分に残っているようだ。たとえば、果実堂の井出剛社長は1年半前になるが、時事通信社のインタビューでベビーリーフ市場について次のように述べている。
「日本の市場規模は現在、50億円ぐらい。ベビーリーフは今、飛ぶように売れていて、当社で年間1000万パック、生産量は570トンだ。日本の人口はアメリカの3分の1と計算した場合、市場は500億円、少なくとも300億円ぐらいにはなる」(時事通信社「Agiro」2015年10月13日号)
木村も認識は同じである。
「まだ伸びそうな感じがします。なぜかといえばサラダ需要が伸びているから。もう一つはレタスの生産が不安定なこと。サラダの食材としてベビーリーフはレタスの代わりになるので、そこに入り込める。加えて都市ほど需要が開拓できていない地方に入っていける余地がある」
全国に農場を展開
実際にHATAKEカンパニーには新規の注文が後を絶たない。だから、「農地が足りない」は木村の口癖だ。そこで、HATAKEカンパニーは全国に農場を探し、じわりじわりと広げている。
経営面積は拠点がある茨城県で72ha、岩手県で5ha。最近まで大分県でも別の農業法人と10haを共同で経営していた。
さらに、今年だけでも愛知県幸田町での4.5haに加え、埼玉県では農業から撤退する建設会社が所有している30haを借り受ける。ほかにも水戸市で基盤整備が終わったばかりの農地3.5haについても作り始める。
全国に農場を展開するのは、一つには需要量に応えると同時に安定的に供給するため。拠点である茨城県が天候の影響で品薄になる時期に他の地域でカバーするのだ。
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木村誠 キムラマコト
HATAKEカンパニー
1966年、東京都板橋区生まれ。早稲田大学理工学部工業経営学科卒業後、塾講師や会計事務所職員を経て、岩石から抽出するミネラル資材を製造・販売する有限会社川田研究所(茨城県つくば市)に就職。98年、夫婦でベビーリーフを作る木村農園を創業。2006年、農業生産法人TKFを設立、16年、現社名に変更。
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