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県外に農場を設ける際に気をつけていることは二つある。現地採用と地元行政との関係づくり。
「農業はとにかく地域とのつながりが大切。地域になじむこと。それから行政といかに協調できるか」
このほか、北海道でベビーリーフを大規模生産する農業法人と相互補完契約を締結している。それぞれで品薄になる時期が異なることから、ベビーリーフの「物々交換」をすることで安定供給につなげているわけだ。加えて県内外に契約栽培先として農業者5戸と農業法人9社を抱える。
農業を核とした事業の
クラスター化
HATAKEカンパニーについて特筆すべきは、経営が拡大するとともに、農業関連事業のクラスターを構築していることだ。
たとえば物流事業。取引先や市場へのベビーリーフの配送を合理化するため、既存の運送業者に委託するのをやめ、一昨年に自社でその会社を立ち上げた。現在6台のトラック、バン1台が毎日走行し、ベビーリーフだけで年間550tにもなる出荷分すべてをまかなっている。
従来はどうだったか。運送業者には既存ルートの途中で少し外れて立ち寄ってもらい、荷台の空きスペースを埋める格好でベビーリーフなどを載せてきた。ただ、燃油高騰のあおりを受けた運送業者は、次第にそれを嫌うようになる。ある運送業者は料金の増額を要求してきた。一方でHATAKEカンパニーとしても増え続ける取引先に安定供給する必要性が高まっていた。物量を踏まえても自社で物流事業を興しても採算は取れると見込んだことから、その決断に踏み切ったのだ。
さらに、一昨年には自社の畑にまく堆肥の製造事業にも着手した。製造施設を建設し、近隣の畜産農家から集めた家畜糞尿で堆肥をつくっている。
今後手がける予定にしているのは農業用ハウスの施工やメンテナンスの事業。農場を広げる中でハウスの施工面積も増えていく。新規施工やメンテナンスの必要性が生じた場合、既存の事業者に任せていては時間がかかってしまう。
周辺農家の仕事も受注
一連の事業では自社の仕事だけを請け負うことはしない。たとえば、運送業者に関しては、トラックの荷台が空いたときには近隣の農家の荷物も有料で積み込む。堆肥にしても、自社の畑で必要とする量以上をつくれそうなので、ほかの農家に販売していく。ハウスの施工やメンテナンスの事業についても同様である。
託児所や食堂で
働きやすい職場づくり
いまや多くの製造業において人材の確保は至上命題となっているが、農業も同じ。とりわけベビーリーフの生産では機械化が十分にできていないこともあり、安定生産にはいまだに人手が欠かせない。同社はインターン制度を設け、入社前に就職希望者の適性を判断している。
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木村誠 キムラマコト
HATAKEカンパニー
1966年、東京都板橋区生まれ。早稲田大学理工学部工業経営学科卒業後、塾講師や会計事務所職員を経て、岩石から抽出するミネラル資材を製造・販売する有限会社川田研究所(茨城県つくば市)に就職。98年、夫婦でベビーリーフを作る木村農園を創業。2006年、農業生産法人TKFを設立、16年、現社名に変更。
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