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新・農業経営者ルポ

農業者のための会社をつくりたい


加えて働きやすい環境づくりにも力を入れる。いったん雇い入れた人材の定着を図るため、今年予定しているのが社員食堂と託児所の建設だ。第一義としては、地域の貴重な労働力である幼い子供を抱えた母親に長く働いてもらうため。
もう一つは地域の人が気軽に来られる場所にしたいということだ。そこで、これから新設する建物は単に社員食堂や託児所にするのでなく、直売所やレストランも併設することで開放された場所にする。土日は学習道具を持ってくる地域の児童や生徒が勉強するスペースにして、HATAKEカンパニーの社員たちが適宜教えるといった付き合い方も思案している。
いずれは人材派遣事業を興すことも検討中だ。HATAKEカンパニーに出荷するグループ内の農家、さらにはグループ外の農家についても、彼らが抱えている労働力問題を解消していく。人材として注目しているのはスポーツ選手のOB。木村は、「体力のあるスポーツ選手のセカンドキャリアとして農業の場を提供できるようになれば」と考えている。
まさに地域とのつながりを大切にしている木村だからこそ、出てくる事業の数々である。

夫婦2人で5000万円の衝撃

これだけ大きな規模の農業法人を率いる木村だが、じつは農家出身ではない。実家の父は旋盤工を営む個人事業主。そのため、木村も若いころから「父と同じように自分で仕事しただけ稼げる仕事に就きたかった」そうだ。
その言葉どおり、大学卒業後は公認会計士を目指すも挫折。塾講師を経て、川田研究所というミネラル資材の製造・販売会社に入社して農業と出会う。同研究所は、野菜の卸会社であるデリカフーズの契約農家に技術指導をしていた。
木村はミネラル資材の普及を通じて、さまざまな農業経営の本音の部分を見ながら、雇用人数や作業の中身、売り上げを細かく記憶していった。その過程で驚くことになったのは、農業者の収入が想像していた以上に多かったことだ。とくに印象的だったのは千葉県でルッコラを作る農業者の夫婦。所有するハウスは35棟、パートは1人。それで毎日80kgを収穫し、年収は推定5000万円だった。
「もう衝撃でしたよね。葉物を回転させていけば、これだけの儲けになるのかと。まさにこういう経営をやりたいなと思ったんです」

ベビーリーフとの出会い

この思いが実現するにはある人との出会いがあった。それはデリカフーズの役員だった高山幸久だ。ベビーリーフの発見者であり、日本のサラダ業界を作り上げた立役者である。

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