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特集

耕作放棄地活用「次の一手」


ニュージーランドの放牧管理技術を日本に広めるため、小谷氏はニュージーランドスタディ・ツアーやグラスファーミングスクールを開催している。

【電気柵を使って
野生動物も管理・出荷】

小谷氏は、管理放牧技術を応用して、害獣と見なされていた野生動物も事業として成立させてきた。野生動物も家畜と同じ動物性タンパク質と捉えており、野生動物は自然の草を食べて育つため、生産効率も良く、人の体にも良く、環境にも良いと考えている。
参考にしたのはやはりニュージーランドの例である。40年ほど前、英国から狩猟目的で入れた赤鹿が爆発的に増えてしまった。困ったニュージーランドは、肉はドイツへ、袋角は韓国へ輸出し始めた。現在は、放牧のノウハウを使って赤鹿を家畜として飼っている。
そのノウハウというのは、やはり電気柵を使ったものである。北海道での鹿による農林被害は現在約50億円にのぼる。小谷氏は北海道のエゾシカ問題検討委員として、電気柵などを使ったエゾシカの管理を広めようと活動している。
北海道では約10年前からエゾシカの間引きをしている。ハンターが減ってきているため、電気柵などを利用した間引きシステムを導入するようになった。
間引きシステムとは、柵の一部を開けて鹿の通り道をつくり、徐々に狭い囲いのほうに誘導して、最終的に小さい箱のなかにまで誘導して捕獲する方法である。捕獲したエゾシカは、出荷するまで鹿牧場で家畜と同じように放牧しておき、いわゆる安定供給ができるようにしている。小谷氏は、狩猟にしろ、間引き管理にしろ、野生動物を管理できる人が不足していることが課題であり、目下、人を育てる教育が必要だと考えている。
小谷氏が推奨している電気柵は、1t近い力で引っ張っても切れない高張力鋼線というワイヤーを使っている。この電気柵は、鹿のほか、アライグマやキツネ、ネズミ、猫などにも対応できる。運動能力の高い猿も、工夫すれば対応できる。

【移住者約50軒
都市から人を呼び込む】

ニュージーランドでは、都会に近い酪農家が都会の人に小さく分割した牧場を販売している。そこで放牧を楽しんでいる都会の人は「ライフスタイル・ファーマー」と呼ばれている。
小谷氏は、この方法を日本で展開し、地域に人を呼び込もうと考え、当別町農村都市交流研究会を発足した。農業に携わる暮らしや環境に配慮した暮らしに興味がある人を呼び、定期的に地熱エネルギーや薪ストーブの使い方など、実際にその地での暮らしに役立つワークショップを開いている。また牧場を始めたい人には、前述のグラスファーミングスクールに入ってもらい、入植から返済までのサポートもしている。

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