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本誌は子実トウモロコシ生産への取り組みを語ってきた。作物としての子実トウモロコシは農水省においても認識を得られ、国会でも農水大臣がその振興を語るまでになった。しかし、トウモロコシ導入の前提として水田農家での畑作技術体系の導入が必要なのである。ところが、担い手農家と言われる人々においても水田に畑作技術体系を導入することに関しての認識はまだまだ低い。
一方では有り余る農地をどうするかが課題とされ、各地の農業経営者たちは地域の中で新たに耕作を求められる立場に置かれる。
「私は規模拡大はしません」とはっきり宣言したり、あるいは耕作に手間のかかる農地を頼まれたら「そんな農地は面倒見切れません」と断る勇気を持つべきだろう。「地域の水田を守れ」などという綺麗事を言いつつ、自分のできないことを棚に上げて耕作に不適な農地を押し付けてくる人々の勝手に対して、あなた自身の経営を危うくするようなことはすべきではないからだ。
水田経営を今後も続けようというのであれば、何よりも畑作技術体系による経営を我がものとすべきである。もう「できない理由探し」をしていられる時ではないのである。
やがて500ha、1000ha規模の水田経営が当たり前になるだろう。かつて、規模拡大の阻害要因と言われた趣味的農家が営農を止めないという、よく聞かれたボヤキはもう通用しない。
コメの市況も中長期的には下がっていかざるを得ない。それに対しても、トウモロコシなどによる畑作技術体系の導入や、安定した契約取引の確保など、対策がないわけではない。
あと数年後には現実化するそんな時代に、規模の大きな農業オペレーターとしての経営を続けるか、それともかつての地主たちがそうであったように、農地、人材、マーケットを見つめて未来を作り出す本物の農業経営者になるのか。あなたの能力が試される時代がもうそこに来ているのである。
現在という過去の結果にしがみつくことなく、未来から逆算した今日を作り出そう。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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