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【農業は先進国型産業になった!】
さつまいもは成長産業になる(1)JAなめがた甘藷部会(茨城県行方市)
- 評論家 叶芳和
- 第1回 2017年04月03日
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[1]「農協」でない農協
―イノベーターは組合長
ここは「農協」ではない、というのが一番の印象である。製品開発と市場開拓力の高さが注目される。JAなめがた(棚谷保男組合長)では、さつまいもが成長作物になっている。「焼き芋」が若い女性の人気になっており、スーパーの店頭販売で伸びている。
行方(なめがた)市は茨城県南東部に位置し、霞ヶ浦と北浦という二つの湖に挟まれた南北に半島状の地形である。両湖岸は平坦な水田地帯であるが、中央の丘陵台地(標高30m)は赤ノッポ土壌(火山灰土)からなり、水はけがよい傾斜畑が広がっている。比較的温暖な気候に恵まれ、露地野菜作が容易で、野菜園芸を中心とした農業地域である。ミズナ、レンコン、チンゲン菜など年間60品目以上の野菜を生産している。いずれも出荷量は県内1位、2位を誇っている。
JAなめがたは自然条件に恵まれ、野菜の百貨店のような産地だ。気候温暖、水はけがよいので、さつまいも栽培に適した土地である。青果物の種類は多いが、主役は“さつまいも”である(青果物販売の3分の1は甘藷)。市場戦略も、まず尖兵としてさつまいもを売り込み、それに他の野菜が続くという形で、2016年度の青果物販売額は103億円に達した。05年比27%増である。
農業は低迷産業と見られがちであるが、JAなめがたは成長している。中でも、さつまいもの成長が目覚ましい。図1及び表1に見るように、10年余で、さつまいもの販売額は2.9倍(数量1.7倍)である。数量も金額も伸びている。
茨城県の農業産出額は全国(都府県)トップで、その地でさつまいもは米、養豚、鶏卵に次ぐ県内第4位の主力作物である。さつまいもは所得上昇すれば消費が減るという「劣等財」であり、長い間減少トレンドにあった。それが逆転を示し始めているのである。認識を改めなければならない。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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