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この間、スシローは「かっぱ寿司」を抜いて回転寿司業界の売上トップとなった。店舗数を増やしただけでなく、1店舗当たりの売上高を10年の2.8億円から12年以降は3.3億円に伸ばし、原価率は10~12年の49.8%前後から14年以降は48.8~48.9%を維持している。業界2位の「くら寿司」((株)くらコーポレーション・連結会計売上高1,136億円)の原価率が45.9%、業界3位から4位に滑り落ちた「かっぱ寿司」(カッパ・クリエイト(株)・同売上高803億円)が44.3%であるのと比べると、スシローは食材にお金をかけて高価格商品を提供しながらも売り上げを伸ばしてきた。
実は、スシローはかっぱ寿司と同様に、12年には最終赤字に転落している。デフレの波をとらえて増加した低価格回転寿司の大手3社の店舗数合計が1,000店を超え、都市郊外で競合が激化したためだ。かっぱ寿司はその後も3期連続で最終赤字を計上し、低価格戦略が「安かろう悪かろう」と裏目に出たまま低迷から抜け出せていない。ここからの戦略が両社の明暗を分けたといってよいだろう。
スシローの経営体質はどのように強化されたのか。上場申請資料によれば、英国ファンドから出資を受けた12年以降、厳選された素材による高付加価値商品として1皿180円以上(現在では280円以上もある)の商品提供を始めたほか、店舗社員の作業の平準化、アルバイト・パートタイマーへの業務移管による店舗運営の効率化で収益力を上げた。定番商品のコストパフォーマンスを高めるとともに、高齢化による飲食業界の人手不足に対応できるオペレーションを確立したことが経営を強くしたようだ。
現在、5,600億円超えといわれる回転寿司市場は、3,500億円前後の牛丼市場(「吉野家」956億円、「松屋」839億円、「すき家」・「なか卯」1,868億円)と比べてもコメ消費という意味では同等の存在感がある。コメの使用量はスシローの年間2万tに対して、吉野家は同4万t。コメの売上高は数十億円に過ぎないとはいえ、成長を続ける業界トップのスシローに投資することは全農のビジネスモデルとして意味のある選択となるのだろう。しかし、縮小する国内食市場のなかだけで全農の直販を進めるのであれば、卸業者を通さず中抜きをするだけで米卸と全農の殺伐としたシェア争いといった結果しか残らない。せっかく全農という事業会社が投資をするのであれば、コメの消費市場が広がるような回転寿司の都心での展開や海外進出への発展を期待したい。
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松田恭子 マツダキョウコ
(株)結アソシエイト
代表取締役
日本能率協会総合研究所で公共系地域計画コンサルタントとして10年間勤務後、東京農業大学国際食糧情報学科助手を経て農業コンサルタントとして独立。実需者と生産者の連携の仕組みづくりや産地ブランド戦略を支援している。日本政策金融公庫農業経営上級アドバイザー試験合格者。(株)結アソシエイト代表取締役。
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