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ゼオライトのジャングルジムのなかにある空間はアンモニウムイオンとカリウムイオンとちょうど同じ大きさなので、肥料として施した窒素とカリを貯金箱のように貯め込むことができる。
2.有機質肥料とも相性が良い
CECが10以下の土壌にゼオライトを10a当たり数t単位で施用すれば、保肥力が改善される。しかし、CECが20以上の土壌では大量のゼオライトを施用しても増収には結びつかないことが多い。ゼオライトの施用効果は、保肥力改善より窒素やカリ肥料の貯金箱としての働きのほうが大きい。とくに有機物とのコンビネーションが最大の効果を発揮する。
増収効果のメカニズムを説明しよう。窒素肥料として硫安を畑に施用すると、アンモニウムイオンが一部水溶性アンモニウムイオンとして土壌水中に留まり、硝酸化成細菌と呼ばれる土壌微生物の作用により硝酸イオンに変わる。この硝酸イオンが畑作物の養分になり、根から吸収される。
この硝酸化成細菌の作用がゼオライト施用の有無で異なるのだ(図2)。ゼオライトを施用しない土壌では、硝酸イオンが陰イオンであるため土壌には吸着されにくく、降雨や潅水により下層に流れてしまう。
一方、ゼオライトを施用した土壌では、硫安を施用するとアンモニウムイオンがゼオライトの結晶構造のなかに入り込み、交換性アンモニウムイオンとして吸着される。吸着されなかったものが水溶性アンモニウムイオンとなり、土壌中の硝酸化成細菌により硝酸イオンに変化する。土壌中では一定のイオンバランス(化学平衡)が保たれているので、水溶性アンモニウムイオン濃度が下がると、ゼオライトに吸着されていた交換性アンモニウムイオンが放出され、水溶性アンモニウムイオンに変わる。
土壌中の粘土鉱物や腐植にも陽イオンを吸着する能力があるが、ゼオライトに劣るため、アンモニウムイオンが硝酸イオンに変わる速度が速まる。つまり、ゼオライトを施用した土壌では交換性アンモニウムイオンとして留まる時間が長くなるため窒素肥料としての肥効が持続し、それが収量アップにつながるのだ。
窒素肥料には硫安などの化学肥料と、油かすなどの有機質肥料がある。畑に有機質肥料を施すと、土壌中の糸状菌(カビ)などの微生物により分解され、アンモニウムイオンが放出される。それらはいったん土壌に吸着されてから硝酸化成作用を受けるが、ゼオライトを施用した土壌ではアンモニウムイオンが保持され、硝酸イオンへの変化を遅らせる。そのため、有機質肥料の単独施用より窒素の肥効を高めることができる。ゼオライトは有機質肥料との相性もよく、併用効果は堆肥や緑肥などの有機物でも同様に保肥力改善に有効だ。
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後藤逸男 ゴトウイツオ
東京農業大学 名誉教授
全国土の会 会長
1950年生まれ。東京農業大学大学院修士課程を修了後、同大学の助手を経て95年より教授に就任し、2015年3月まで教鞭を執る。土壌学および肥料学を専門分野とし、農業生産現場に密着した実践的土壌学を目指す。89年に農家のための土と肥料の研究会「全国土の会」を立ち上げ、野菜・花き生産地の土壌診断と施肥改善対策の普及に尽力し続けている。現在は東京農業大学名誉教授、 全国土の会会長。
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