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3.賢いゼオライトの使い方
野菜の苗を育てるための床土は農家が自ら作るものと相場が決まっていた80年代に、筆者らは砂状のゼオライトを主原料とする園芸用育苗培土を開発した。副原料として保水性・透水性を高めるためのピートモスとバーミキュライト、パーライトを混合し、肥料源としてリン安や塩安などの水溶性化学肥料、そのほかに硝酸化成細菌を添加した。肥料以外の原料は100%土壌改良資材なので、作った苗を本圃に定植すれば、徐々にではあるが、土壌改良効果が発揮される。この育苗培土の最大の特長は、窒素の肥効が長く続くことで、ネギなど育苗期間の長い野菜でも追肥がいらないことである。
もう一つの上手な使い方が、堆肥やぼかし肥への混合だ。家畜ふん堆肥を作る際に、この粉状のゼオライトを10%程度混ぜると、家畜ふんが分解して発生するアンモニアをゼオライトが吸着して、悪臭を抑えることができ、水分調節材にもなる。「ゼオライト堆肥」に吸着されたアンモニウムイオンは、施用後真っ先に速効性窒素肥料としてはたらく。
ぼかし肥の一般的な原料といえば、油かす・魚かす・骨粉などだが、写真2のように大豆油かすとゼオライトを混ぜ、枯草菌を添加して10日から2週間ほどぼかすと「ゼオライトぼかし」ができる。従来のぼかし肥に比べて、窒素主体でリン酸含有率が低いため、園芸ハウスのようなリン酸過剰土壌にピッタリの肥料だ。全量を施用しないで一部を残しておき、次のぼかし製造時に種菌源として使うと、毎回枯草菌を購入せずに済む。なお、添加する枯草菌を選べばフザリウムなどの土壌病害に対する拮抗性も期待できる。
また、基肥を溝施用する際に肥料と同量程度のゼオライトを併用すれば、肥料中の窒素とカリの肥効率を高めることができる。まさにゼオライトは「土づくりの助っ人」だ。
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後藤逸男 ゴトウイツオ
東京農業大学 名誉教授
全国土の会 会長
1950年生まれ。東京農業大学大学院修士課程を修了後、同大学の助手を経て95年より教授に就任し、2015年3月まで教鞭を執る。土壌学および肥料学を専門分野とし、農業生産現場に密着した実践的土壌学を目指す。89年に農家のための土と肥料の研究会「全国土の会」を立ち上げ、野菜・花き生産地の土壌診断と施肥改善対策の普及に尽力し続けている。現在は東京農業大学名誉教授、 全国土の会会長。
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