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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

農地と投資とコストの話(4)受託作業による規模拡大

地主不在となった戦後日本で
いまだ進まない農地集積

よく「先祖代々の土地」という表現が使われるのは、戦前に地主だった家柄であることが多い。日本では戦後の農地解放により地主と小作の関係は解消されたが、海外では長らく農地の所有者であるオーナーと、マネジメントをする経営者、農作業を実際に担う労働者が明確に分かれている。
所有者、経営者、労働者の分業する仕組みは実に合理的である。オーナーは経営者と約束した地代で、経営者は役員報酬で、労働者は労働賃金で生活費を賄う。この考え方は農地に限ったことではなく、文明が成立して以来、特権階級の王族や貴族が土地を所有し、雇われた奴隷が実際に作業を行なってきた。
日本でも同様に、かつては常に身分が上のものが土地を所有しており、小作人は収穫物あるいは小作料を地主に納めて暮らしてきた歴史があった。そのスタイルが海外ではいまでも続いているのである。ただし現代では、古代から中世の地主が年貢や地代を一方的に収奪するような関係ではなくなった。先進国を中心に、農地の賃料は上限や貸借契約のルールが法律で定められ、合理的な手段として賃借が進められるようになっている。
正確な表現ではないかもしれないが、農地の所有権が国に帰属するのであれば社会主義であり、農地を個人あるいは法人が所有するのであれば資本主義といってもいい。前者の地代は税収で、後者の地代は利益である。農地の所有欲は万国共通の発想である。しかしながら、地主が不在となった日本では、ややこしい状況が生じているように思う。農地解放後、もともと地主であった家柄も、小作であった家柄も、経営面積が小さくなった。戦後70年余りのときを経て、大規模化が進んだ反面、離農も進み、世代交代をする不在地主も増えた。

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