ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

イベントレポート

電気柵を活用した放牧と野生動物の管理 農村経営研究会定例会


ニュージーランドの管理放牧技術の核は、牧場を電気柵で小さい面積に区切った牧区を複数つくることにある。家畜をそのうちの一区に放し、1日2回、搾乳するタイミングで隣の牧区に移動させる。一巡すると、最初の牧区の草が成長しているといった具合に設計されている。
与える草は約15cmと短い。この草高だとトウモロコシに匹敵する栄養価を持つ。牧区を移動させることによって、草を短く保ち、家畜の食欲と消化を促進し、乳や肉の生産効率を上げる。また糞尿が草地に還元されることによって、草地の土壌動物や土壌微生物が活性化し、生態系が維持される。こうして肥料が少なくても質の良い草を育てるという循環を成立させる。
小谷氏は事業のかたわら、ニュージーランドへのスタディツアーや、グラスファーミングスクールを開催し、その技術を日本に広めてきた。

野生動物も管理し
タンパク源として活かす

ニュージーランドではかつて増えすぎた赤鹿の対策のため、肉はドイツへ、袋角は韓国へ輸出し始めた。現在では放牧のノウハウを使って赤鹿を家畜として飼っている。小谷氏もこれを応用し、害獣とされていたエゾシカなど野生動物の管理・販売を推進している。家畜も野生動物も同じ動物性タンパク質だが、輸入穀物で生産するよりも、自然植物を食べさせて生産したほうが、人間の体にも良く環境負荷も低いという。
小谷氏は北海道のエゾシカ対策検討委員となって、電気柵などを使ったエゾシカの管理を広めてきた。間引き管理と呼ばれる手法で、電気柵などの一部を開けて徐々に狭い囲いに誘導し、最終的に小さい箱のなかに入れて捕獲するというものだ。捕獲したエゾシカは、出荷するまで鹿牧場で放牧しておき、安定的に供給する仕組みを取っている。
またニュージーランドでは酪農家がライフスタイル・ファーマーと呼ばれる都市部の人に牧場を提供している。この手法を取り入れるため、小谷氏は当別町農村都市交流研究会を立ち上げ、地域づくりにも力を入れている。現在、地域には農業や自然環境、農村の暮らしに興味のある人々が50軒ほど集まっている。
参加者からは、放牧は小規模でも成り立つのか、ほかの家畜や野生動物ではどうか、間引き管理の留意点は何かなどの質問があり、活発な討議が繰り広げられた。

関連記事

powered by weblio