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イベントレポート

「ベールを脱いだ『スマート・テロワール』の実地検証」山形大学農学部が挑戦する農村の新産業/新品種産業化研究会 講演会


大豆は、エンレイと里のほほえみを耕うん同時畝立て播種技術を用いて栽培した。エンレイの単収は庄内地域の平均とほぼ同じであったが、里のほほえみは平均の1.5倍であった。いずれも規格内の比率が高かった。これは登熟度を見極めた適期収穫によるもので、斉一化栽培によって品種の特徴が大きく表れたと考察している。また、厳選素材の研究では、粒径ごとと品種ごとに成分分析と味覚分析を行なった。顕著だったのは、粒径が大きいほど糖度が上がること、品種の違いが味覚に大きく影響することだった。今後、食味の違いの理由を研究していく。
飼料用子実トウモロコシはすでに豚への給与試験に使用している。
また、耕畜連携畑作での土づくりの研究も進めている。豚糞堆肥、収穫残さ、飼料用子実トウモロコシ栽培、緑肥作物などを導入した土づくりの評価を進める。土壌評価は主に物理性と化学性が用いられるが、スマート・テロワールでは生物性の評価を重要視する。
豚の肥育試験では輸入配合飼料と自給飼料で肥育している。輸入配合飼料のほうが豚の生育が良いが、肥育期間が長くなったとしても自給飼料は飼料費の大幅な削減効果が大きいと考察している。
「収穫物は果実一つひとつのレベルでばらつきがある。粒径が大きいソバで打った蕎麦は明らかにおいしい。厳選して美食革命という食と農のエンターテイメントとして地域に循環させることで、地域の活性化につながるということが見えてきた」

庄内地域の水田の
畑地転換と農村計画
(五十嵐淳氏)

山形大学農学部と連携協定を結んだ(一社)山形県農業会議の五十嵐淳氏は、庄内地域の農村計画のイメージを示した。
五十嵐氏は、休耕田や耕作放棄地に光を当てて資源に転換することと、農村計画を立ててバックキャストで取り組むという二つの視点を持ち、地域をスマート・テロワールに導こうとしている。
五十嵐氏の試算によると、庄内地域の水田は1万4600haが余剰となる。これを活用し、365日供給できる畑地穀物栽培、畜肉肥育をすることで、人口27万人の庄内地域の日々の需要を取り込むという考えだ。
講演では30年後の農村計画図(イメージ)を公開した。山の下のほうは放牧地に、傾斜地は畑に変え、平坦地には水田が広がっているというイメージ画である。
取り組みは五つある。まず農村計画を見える化をする。2~3年のうちに農村計画を3Dアプリで公開し、地域の人々と話し合いを進める。また、傾斜10度以上は放牧地にする。さらに、耕作放棄地は放牧養豚で解消するとともに、鳥獣害を防ぐ緩衝地としても活用する。豚肉は既存の精肉と競合しない加工用として使用する。農村の価値である美しい景観づくりにも取り組む。個人戦ではなく、地域の団体戦として地域ブランドを構築していく。

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