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新・農業経営者ルポ

久留米をけん引する“Agrizmer”


「単純に水泳だと九州では福岡大学が強いんです。でも、水泳部員によるバスケ大会なら勝てるんじゃないかと思って九州各地の大学の水泳部に通知し、オフシーズンにウチの大学に来てもらってバスケ大会を開きました。まぁ、バスケでもコテンパンにやられたんですけどね(笑)。サッカー大会もしましたし、違う大学に練習や合宿に出向いたり、結構積極的にさまざまなことをやりました。そういうのがやっぱりおもしろかったですね」
もちろん、自分が預かる水泳部の練習場所を確保したり、練習メニューを組んだり、大会に申し込んだりと、日常業務と並行しての行動になる。また、学内には医学部があり、田中より年上の4回生もいた。未熟さゆえにいっぱい粗相してものすごく叱られたというが、めげることなく改善を繰り返し、最後まで任期を務め上げた。そういった上下関係に辟易し、辞めていった同期や後輩がいたなかでのことだった。

実用性からベンツを見送る

田中の農場は筑後平野に位置し、北に九州最大の筑後川が流れ、南に耳納連山がそびえる風土にある。肥沃で水はけも悪くなく、コメでも野菜でも果樹でも作ればなんでも取れる地域だという。田中の父親は周囲に比べ規模や品目が多いわけではなかったが、地元では一目置かれる存在だったようだ。就農時の田中はお前の親父にはかわいがられたよとたびたび声をかけられたという。
両親と農作業に励む一方で、田中は4H(農業青年)クラブの活動にも精を出す。大学時代の水泳部と変わらず交友範囲を広げ、地元では得られない刺激を受けた。
「一歩外に出れば多種多様な人がいますよね。いい意味でライバルです。東京とかで全国大会があると、帰ってきた日なんかはとくにやる気が出ました。地元での話といえばとかくネガティブになりがちですけど、全国大会で出会うみなさんは前向きですからね」
田中は最終的に全国農業青年クラブ連絡協議会の副会長にまで上り詰めている。小社が10年春に実施した豪州ビクトリア州農業視察には、当時会長でアグリズム編集長でもあった荻原昌真((有)信州ファーム荻原、長野県東御市)に声をかけられて同行した。
その数カ月前に発行されたアグリズムに当時27歳の田中が登場している。誌面にはこんな目標が掲載されていた。

35歳、ベンツに乗る
45歳、自分の店を構える
60歳、海外で暮らす

田中は今年で35歳になる。まず、ベンツについては家族構成から見送ることにしたという。

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