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新・農業経営者ルポ

久留米をけん引する“Agrizmer”


「掲載当時から子どもが増えまして3人になりました。ベンツはすごく欲しくていまもトイレにポスターを飾ってあったりするんですけど、実用性を考えて半年ほど前にミニバンを買っちゃいました。あのころはステータスが欲しかったんですよね。経営規模にしても大きいほうがいいし、年収も多いほうがいい。歳を重ねるごとに理想が現実のほうに引っ張られてきました。35歳になるまでもう少し時間があるんでもしかしたらベンツを買うかもしれないですけど、だとしたらその前にトラクターでしょうね」
ちなみに、45歳の店舗経営に関しては意欲をのぞかせており、60歳からの海外暮らしは日本の魅力を実感することで希望が薄れてきているという。

親世代にも物怖じせずに物申す

先ほどのベンツの件ではないが、田中の発想は堅実そのものだ。これは彼の父親も共通している。田中が働き手として加わるにあたり、経営規模や作付品目を増やしてもよさそうなものだが、多少の規模拡大は進めても、品目は縮小路線に舵を取った。
「現在もそうですけど、主力はリーフレタスでしたね。このあたりは農協への出荷率が高く、大規模農家でも全量を農協に回す人がいるくらいです。我が家のリーフレタスも農協出荷なんですけど、これと収穫時期が重なるハクサイは半分の面積に、キャベツは完全になくしました。ゴボウも今年から手を引きます。その分、リーフレタスに集約します」
どれも田中が“地域では怖いと恐れられていた親父”に進言することで実現してきた。その対象は父親だけにとどまらず、所属農協の年配方が取り仕切る生産部会も含まれている。
「新しい品種や品目をどんどん試しましょうと提案しています。それこそもうバンバンぶち当たっていますね。
農家が思ういい農産物と買い手がいいと思う農産物とは違いますよという話もしています。肥料をたくさん与えて量が取れれば収入は上がるでしょう。でも、施肥も過剰なら吸収されずに畑に残ってしまいますので、そこをうまくコントロールして経費を抑えることも利益の一つに結びつきますよと発言しています。その直後に口だけじゃ野菜は育たんとか言われるんですけどね(笑)」
農業界の外部からは至極当然と映る田中のこういった言動も、農村社会にどっぷり浸かった人間には理解されないことが往々にしてある。しかし、ここでくじけるような人物ではない。もう一つ彼の奮闘ぶりを如実に示すエピソードを紹介したい。これは近隣でリーフレタスを生産する農協との協業を模索するものになる。

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