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「隣の畑と比べるとか、産地間競争なんてなくしたらいいんです。もうそういう時代じゃない。近隣で同じ農産物を生産する農協があれば、そこに勉強させてもらいにいくとか、出荷ルートを教えてもらうとか、場合によっては一緒にやりましょうとか、それくらいのことをするべきだと思います。とくにリーフレタスなんかは味がどうのこうのじゃなく、安定供給が大事なんです。ウチの農協の部会は小さいですから、僕がそういう働きかけをしているんですけど、先方にも似た思想の人がいて、農協の垣根を越えた部会の合併話が実を結びそうになってきました」
大学の水泳部や4Hクラブで鍛えた物申す姿勢は地元の農業をも変える原動力になっている。
一農業青年からの飛躍
田中はいま、岐路に立っている。
農場の労働力は田中に両親、それにピーク時で最大20人前後のパートタイマーになる。4haで作付けするリーフレタスを中心に、ハクサイや金時ニンジン、枝豆を露地栽培で生産し、4haに及ぶ水稲のほか、水稲とタマネギの育苗も手がけている。家族経営では限界ギリギリにまで至っているのが実情だ。
そんななか、田中の父親が肩の治療でこれから3カ月間、離脱する予定になっている。母親も年末にろっ骨を痛め、一月にわたってほぼ何もできない状態に陥った。二人とも60代に突入し、両親を抜きにした経営というのも検討しなければいけない時期に来ている。
「労働力問題は深刻ですね。先日もそのことで友人と話したばかりです。パートさんも高齢化していますし、海外からの実習生を雇用することも周りでやり出しているところがありますので必要だと感じています。ただ、そのためには夏場の仕事も作らないといけないわけですけど、台風や大雨のことを考慮すると悩んじゃいますね。豪雨となれば冠水もありますし」
それでも、実習生の受け入れやハウスの建設は数年内に実行するだろうという。
アグリズムの取材時から突き抜けられなかったといえばそうかもしれない。とはいえ、田中は立ち止まらず、持ち前のバイタリティーで周囲を巻き込みながら常に突き進んできた。自分中心だったらベンツを購入していたかもしれないが、彼には愛する家族がおり、何より地元が大好きだった。個人としての田中の今後も気になるが、地域をけん引する彼の未来も期待せずにはいられない。 (文中敬称略)
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田中圭介 タナカケイスケ
田中農園
1982年、福岡県久留米市生まれ。小学4年から水泳を始め、九州産業大学付属九州高校でインターハイに出場する。久留米大学経済学部を卒業後、就農。全国農業青年クラブ連絡協議会の副会長を務めたほか、2010年に小社が実施した豪州ビクトリア州農業視察にも参加している。
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