ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

農業は先進国型産業になった!

さつまいもは成長産業になる(2)(株)照沼勝一商店(茨城県東海村)



(4) 民度が国際競争力を決める

いま、照沼氏は地域全体の品質向上を目指し、問題意識の共有に取り組んでいる。「茨城県最高品質農産物研究会」(ELF)を組織し(2007年)、会長を務めている。仲間と共に、科学的に実証された安全性を追求しているのだ。
こうした徹底した品質管理こそ、先進国に農業の比較優位をもたらすのではないか。先進国ほど「命の値段」が高い。「最高品質農産物研究会」メンバーは安全・安心のエビデンスを公表することで、製品差別化が出来、安い輸入品に対して国際競争力を持つであろう。照沼氏の干し芋然りである。家電など製造業ハイテク商品が輸入品に負け国内から撤退する中で、干し芋は労働集約的で、高コスト農産品であっても、国内生産が続いている。
消費者の行動は、安いものを選ぶ人と、高くても安全で健康なものを選ぶ人に分かれる。所得が低い場合、品質より価格選好が強くなる傾向にある。逆に、高所得層では品質選好が強い。概して、先進国ほど、食の安全性についての規制が厳しいのは、品質選好の消費者が多いからであろう。
日本の農産品の多くは、品質は良いが高コストと言われる。輸入品のほうが安い。消費者が品質を問題にしない限り、日本の農産物に競争力はない。日本人の所得が高く、安定していれば、国産品志向が強いであろう。しかし逆に、所得格差が拡大し、低所得層が増えれば、輸入品に甘んじる人が増える。つまり、「国民の民度」が、日本の国内農産品の競争力を左右する。
品質を重視する消費者が増えれば、国産品も競争力がある。そういう意味で、日本の農産物が国際競争力を持つか否かは消費者次第なところがある。
ただし、日本の干し芋が品質面で十分に競争力があるかは疑問なしとしない。照沼勝一商店の品質は高いが、業界全体としてはそこまで到達していないようだ。10年前までは、市場に出回っているのは国産より輸入(9割は中国)のほうが多かった(表3)。近年、輸入が減少しているのは、中国でも生活習慣病対策から干し芋消費が増えて、日本向け輸出まで回らないと考えたほうが良い。
干し芋は、健康志向社会の到来に合わせた新たなビジネスモデルが必要かもしれない。干し芋の主産地の生産基盤は、脆弱になっている。需要は増えても、原料さつまいもの供給が追いつかないかもしれない。小零細農家の多い供給体制の再構築を図るか、土壌汚染の少ない発展途上国から原料を輸入して製品化するかであろう。照沼氏は開発輸入に着手している。アフリカに進出して(後述)、芋づくりを始めた。タンザニアの芋を輸入することで、東海村の「風評被害」を克服すれば、中国や韓国にも干し芋を輸出できるであろう。

関連記事

powered by weblio