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【土と施肥の基礎知識】
土の健康と土壌病害
- 東京農業大学 名誉教授 全国土の会 会長 後藤逸男
- 第17回 2017年05月08日
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畑やハウスで同じ作物を作り続けると連作障害が起こりやすい。その典型が土の中に生息する病原菌が根から感染して、地上部まで枯らしてしまう土壌病害である。土壌病害が出ている畑には病原菌がいるが、発病していない畑にはいない、と思っている人が多いようだが、それは大きな間違いだ。連作を続けてきた土には、必ずといってよいほど病原菌が生息している。
そのメカニズムは、次のようなことである。植物は自分の根の周りの土(根圏土壌)の微生物活性を高めるために、根から糖やアミノ酸などの物質を分泌し、それを餌とするさまざまな微生物を集めている。分泌される物質は植物ごとに異なる。連作を続けると根から同じ餌が分泌されるが、微生物にも好みがあるので、特定の微生物だけが増殖することになる。そのなかに病原菌がいれば、連作によりその密度が徐々に高まり、ある一定の密度を超過すると根に感染して発病に至る。すなわち、土の中に病原菌がいるからといって、即発病するのではない。
これを人の病気に例えてみよう。人は無菌状態で暮らしているわけではなく、空気中や食べ物からさまざまな病原菌やウイルスを体内に入れている。人には体力があるため通常は発病しないが、汚染されたものを食べたり、あるいは体調を崩して体力を消耗したりすると発病してしまう。土壌病害もこれと同じで、土を健康に管理し、連作を輪作に切り替えれば、発病を抑えることができる。このように、土にも人と同じような体力があり、土の体力を「土力」という。
これを人の病気に例えてみよう。人は無菌状態で暮らしているわけではなく、空気中や食べ物からさまざまな病原菌やウイルスを体内に入れている。人には体力があるため通常は発病しないが、汚染されたものを食べたり、あるいは体調を崩して体力を消耗したりすると発病してしまう。土壌病害もこれと同じで、土を健康に管理し、連作を輪作に切り替えれば、発病を抑えることができる。このように、土にも人と同じような体力があり、土の体力を「土力」という。
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後藤逸男 ゴトウイツオ
東京農業大学 名誉教授
全国土の会 会長
1950年生まれ。東京農業大学大学院修士課程を修了後、同大学の助手を経て95年より教授に就任し、2015年3月まで教鞭を執る。土壌学および肥料学を専門分野とし、農業生産現場に密着した実践的土壌学を目指す。89年に農家のための土と肥料の研究会「全国土の会」を立ち上げ、野菜・花き生産地の土壌診断と施肥改善対策の普及に尽力し続けている。現在は東京農業大学名誉教授、 全国土の会会長。
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