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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

人材と雇用の話(1)経営者の報酬の考え方


図3はこれまでに何度も紹介してきた財務2表を6つの数字で簡略化したものである。
まず、貸借対照表の左側に示されている総資本は、「資本家」としての取り分を示している。自己資本比率が高いほど、その取り分は増える。ここで気をつけなければいけないのは、代々続く経営や共同出資の経営では、代表だけではなく、そのほかの経営陣や祖父母や両親にも、資本家の権利があることだ。
また負債が多い場合は、他者の資本に頼っているために取り分が少なくなる。支払利息は融通してくれた金融機関の取り分である。なお、これは資本家としての取り分の考え方なので、法人経営での法律や税法上の出資配当などと結びつけないでほしい。企業、個人事業主の分け隔てもなく、あくまでも取り分の根拠であり、そのための考え方である。
次に「作業者」としての取り分は、損益計算書を元に考える。なぜなら、収益と費用は作業の熟度や速度に大きく影響を受けるからだ。作業機を損傷させれば修理費がかさむし、作業適期を逃せば品質や収量が低下して収益が減る。農業生産の1年の成果を示す損益計算書を通信簿として、経営者を含めた働く人の取り分である人件費を考えるとよい。
最後に経営責任者の取り分であるが、損益と貸借のバランスがその評価となる。総資本が多く、収益が低ければ、資本回転率が劣る。これは経営が保有する資本が、効率よく利用されていないことを意味する。負債が多く、収益が少ない場合は、売上高負債率が高くなる。これを黙認すれば、運転資金は火の車となる。このような状態は、残念ながらおもに経営責任者の采配によってもたらされた結果である。自己責任と受け止めて経営責任者の取り分からまず減額し、経営改善計画を練り直すことに注力しよう。
このように経営者の取り分という側面から改めて財務2表を眺めてみると、浪費の言い訳が通用しないことがよく理解できる。愚痴をこぼしても通信簿はよくならないのだから。人材と雇用について考える前に、代表者である農業経営者の取り分が、よい案配であるのか。まずは自らを冷静に顧みることをお勧めしたい。経営が生み出す利益をどう分配するのか、その根拠となるルールの決め方については、後に触れていこうと思う。

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