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指定産地は、野菜生産出荷安定法施行規則第2条2項で示され、「区域内指定野菜の出荷数量に対する割合が『二分の一』を超えている」ことが条件だ。
金額ベースで「4割超」は、出荷数量ベースでもほぼ同じと推察できる。素直に解釈すれば、出荷数量ベースでも5割を切っているという疑いを誰しも抱いてしまう。
出荷額「4割超」に絡む疑問の数々
出荷比率の実態はどうだろうか。JA土佐あきが出荷するナスの出荷数量について農協に取材してみた。その数字について過去5年間分の公表を求めたら、すぐに教えてくれた。「高知県園芸連が作成した」ものと断わって、ナスの園芸年度、つまり9月から翌年8月の数字だった。JA土佐あきの出荷数量を、高知県安芸農業振興センター区域内の出荷数量(1~12月の年産表示)で割れば、JA土佐あきの出荷シェアとなる(表参照)。
比較対象の期間が違うので正確な数字とは言い難いが、傾向だけはつかめる。5年間平均の数量ベースでの出荷シェアは約57%になる。排除措置命令書が示した金額ベースでの「4割超」と照らし合わせると、約10ポイントの差が出てくる。これだけの差が出るというのは、JA土佐あきが相当安値で出荷したのか、高知県園芸連以外にも出荷したのか、そういう事情でもない限り説明がつかない。
いずれもそういう事実はないと思う。JA土佐あきには立派な選果装置が導入されているので「良品」以上が市場に出荷されているはずだ。相場並みの価格で取引されても、それを下回るような取引価格はないはずだ。次いで高知県園芸連以外に出荷していたということもまず考えられない。JA土佐あきに、そうした販売力があったら、これだけ低い出荷シェアにはならなかったはずだ。
これらの数字でもっとも客観性があるのは、公取委が示した金額ベースの数字だ。JA土佐あきが高知県園芸連に提出した伝票類で確認したはずだ。その伝票類には、出荷量も必ず記載してあるはずだ。公取委に電話をかけて、次の3点について質問してみた。
(1)「4割超」という数字は、4割台の前半か後半か。
(2)金額ベースの数字をつかんでいるということは、数量ベースの数字もつかんでいると思うので教えていただきたい。
(3)この種のシェアを算定するのに、金額ベースの数字を使い、数量ベースの数字は使わないのか。
公取委の回答は、「具体的な数字は教えられない。数量ベースの数字についても同じ。シェア算定には、事案によって数量と金額を使い分けている」だった。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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