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オピニオン

日本農学アカデミーが「遺伝子組換え作物の実証栽培に関する提言」を行なったその内容と意義


これを全うするために報告書作成にあたり、課題に直接に関わりのある、または特別な知識をもっている個々人から答えを求めるのがよいとの考えをとった。そこで(1)関連する文献(1000件以上の研究報告およびその他の出版物、(2)開催した情報収集会議を行ない、80件のプレゼンテーションを集約、さらに(3)700件以上の一般市民からのコメントを集約している。
その結論として、農業および環境への影響については、(1)遺伝子の流れは起こっているが、遺伝子の流れが遺伝子組換え作物から野生種および近縁野生種に起こり環境に悪影響を与えた例はない。(2)遺伝子組換えと作物と環境問題について因果関係を示す決定的な証拠はない。また、人間の健康への影響ついては、(1)健康への悪影響があるとの確固たる証拠はない。(2)遺伝子組換え作物に由来する食品の消費に直接起因する健康への悪影響についての確固たる証拠はない。ただし、遺伝子組換え作物由来であろうがなかろうが、慎重に精査しても検出できない健康への微妙な良し悪しの影響や時間の経過とともに現れる健康への影響は、常に存在する。と結論した。
また、ゲノム編集などの新技術もでてきて、これらの新技術と従来育種法の間における作物品種改良の進め方にはもはや明確な差異が分からなくなってきている。そこでこれからの新品種の各種試験は、育種の手法(プロセス)ではなく、できた品種(プロダクト)で行なうべきとも結論している。
この報告書では、明確に遺伝子組換え作物の安全性は、精査し、確定している。
さて、この米国アカデミーの報告書や東京都の行なった実験などからも遺伝子組換え作物およびそれら由来の食品、飼料の安全性は、確定されている。だからこそ世界的に広まっているのである。また、現在我が国は、大豆やトウモロコシは、ほとんど輸入に頼っており、その7割は、遺伝子組換え作物で、年間約1600万t輸入している。もしも遺伝子組換え作物の輸入が止まると国産の動植物油脂や、鶏肉、鶏卵の価格は約2倍になるとの試算(読売新聞17年3月1日朝刊、論点)もある。
以上のような科学的安全性の結果から、我が国では、政府が許可している遺伝子組換え作物は、原則栽培してかまわないのであるが消費者の反対があることや、原則禁止条例があって現在花卉を除き我が国での栽培はできる状況にない。私は、この考え方の根底に、「消費者へのメリットがなく、農業者にしかメリットがない。」があるとしている。確かに直接消費者へのメリットは分かり難い点があるが、利点(例えば安定供給、品質の良さ、価格の安さ、農薬使用の減少に伴う地球環境への負荷の減少など)が理解されていない。また、最も理解に苦しむのは、農業者にメリットがあるからと否定することはいかがなものだろうか。農業者がメリットを受けるのは良くないとするのなら、大きな偏見、即ち農業者は利益を得るようにするのは良くないと言える権利が消費者をはじめとするその他の業種の人々は言えるのだろうか。農業者は、貧しい生活をせよと言えるのだろうか。大きな疑問どころか人権の侵害にもなるのではないだろうか。農業の機械化や精密化も農業者にメリットはあるがその他の方々にはメリットは見えないということでは同じと私には思える。同様のことは考えればいくらもあるように思える。勿論、消費者に選択の権利があり、知る権利があることも承知している。現在の表示法に問題があるのも確かであるが、遺伝子組換え作物やそれ由来の製品の安全性は国が科学的に審査を行ない、確保されているのであるから、安全性の問題はない。基本的に表示の意味は、消費者の選択の権利、知る権利のためであることが十分に知らしめられていないことに問題があると考える。安全と安心は、違った概念であることを認識しておく必要がある。

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