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【Opinion】
輸出拡大路線で支持受けるジョハンズ米国新農務長官
- 農業ジャーナリスト 浅川芳裕
- 2005年02月01日
再選を果たしたブッシュ米大統領は、新農務長官にはネブラスカ州知事のマイク・ジョハンズ氏を指名した。ブッシュ大統領は指名の理由の一つとして、ジョハンズ氏が州知事として生産者と共に各国を訪問し、ネブラスカ州農産物の輸出振興に果たした功績を挙げた。
大統領は政権二期目の農業政策の基本方針として、農産物の輸出拡大を目指す生産者を支援する姿勢を明らかにしている。
ジョハンズ氏は、指名承認のための上院農業委員会で「貿易問題が私にとって最重要課題だ。全米農家が作る農産物が世界で公平に取引され、市場が開放されるために、あらゆる手立てを講じる」と述べた。
BSEでストップしている牛肉の対日輸出再開については、「最優先課題として日本に働きかける。牛肉業界は日本の輸入禁止によって多大な損害を受けている。米国は日本の要求に対して、あらゆる科学的、技術的な対応を行った」と結論した。その上で、「これ以上の輸入停止、遅延がないことを確実にしたい。日本が私の意図を理解していることを望む」と延べ、早期全面再開に向けて日本政府に対する圧力を強めていく姿勢を示した。 ジョハンズ氏は知事としても従来、米政府に対して日本が輸入再開を早めるよう強固な交渉姿勢を求めていた。
ジョハンズ氏が知事を務めるネブラスカ州は、米国最大の牛肉加工業の州であり、農産物輸出でも全米4位の農業州。自身もアイオワ州の酪農家生まれ。大統領指名に際しては、「農務長官は農家の息子としてこれ以上ない名誉の職務。今の私があるのは若い頃農場で培われた忍耐と目的意識のお陰。農業の大義を擁護していきたい」と出自を語り、強い使命感を露にした。
ジョハンズ氏が指名された理由には、もう一つ、共和党系州知事としての人気を評価された面もある。ジョハンズは98年に初当選し、2002年には共和党系知事として46年ぶりのこと。これは再選を果たしている。伝統的に民主党の支持層の厚い中西部では快挙と言える。中西部は全米屈指の農業地帯で、主要作物であるトウモロコシ、大豆などの農業従事者を多く有権者に抱えており、農業界に強い支持を持つジョハンズ氏の指名は、共和党の中西部での農民票集めにに一躍買いそうだ。
前任者のベネマン長官は再任に関心を寄せながらブッシュ再選後に辞任表明した。その背景には、彼女のアグリビジネス(農業関連大企業)寄りのイメージが農家受けしないという、ブッシュ政権の政治的判断もありそうだ。
ジョハンズ氏指名直後には、全米酪農協会、全米綿花評議会をはじめ有力生産者団体から、氏を支持する祝電がマスコミに発表された。農業界でジョハンズ氏が支持される理由は、海外市場にネブラスカ州産農産物の売り込みをしてきた実績だけでない。ジョハンズ氏は知事として農業州の利害を束ね、干ばつ対策、農地法の改正、バイオディーゼルの奨励などを推進してきた。州の農家利害だけでなく、広く生産者に受け入れられる政策を連邦政府に働きかけてきた経歴が、農業に通じた政治家として生産者団体からの信頼を得た。農村予算の削減を求める都市選出議員からは「(新農務長官との)衝突は必至」との声が早くも上がっている。
一方、ジョハンズ氏は生産者団体の強い反対に合いながらも、「法人の農業参入を禁止する法律」改正も試みている。家族農業を保護する目的で20年前に制定された州法だが、ジョハンズ氏は「農業に参入しようとする若い農家や、法人経営に挑戦する意欲ある農家にとって、大きな障壁となっている」としていた。
ジョハンズ氏は1月20日、正式に第28代米農務大臣に就任した。
大統領は政権二期目の農業政策の基本方針として、農産物の輸出拡大を目指す生産者を支援する姿勢を明らかにしている。
ジョハンズ氏は、指名承認のための上院農業委員会で「貿易問題が私にとって最重要課題だ。全米農家が作る農産物が世界で公平に取引され、市場が開放されるために、あらゆる手立てを講じる」と述べた。
BSEでストップしている牛肉の対日輸出再開については、「最優先課題として日本に働きかける。牛肉業界は日本の輸入禁止によって多大な損害を受けている。米国は日本の要求に対して、あらゆる科学的、技術的な対応を行った」と結論した。その上で、「これ以上の輸入停止、遅延がないことを確実にしたい。日本が私の意図を理解していることを望む」と延べ、早期全面再開に向けて日本政府に対する圧力を強めていく姿勢を示した。 ジョハンズ氏は知事としても従来、米政府に対して日本が輸入再開を早めるよう強固な交渉姿勢を求めていた。
ジョハンズ氏が知事を務めるネブラスカ州は、米国最大の牛肉加工業の州であり、農産物輸出でも全米4位の農業州。自身もアイオワ州の酪農家生まれ。大統領指名に際しては、「農務長官は農家の息子としてこれ以上ない名誉の職務。今の私があるのは若い頃農場で培われた忍耐と目的意識のお陰。農業の大義を擁護していきたい」と出自を語り、強い使命感を露にした。
ジョハンズ氏が指名された理由には、もう一つ、共和党系州知事としての人気を評価された面もある。ジョハンズは98年に初当選し、2002年には共和党系知事として46年ぶりのこと。これは再選を果たしている。伝統的に民主党の支持層の厚い中西部では快挙と言える。中西部は全米屈指の農業地帯で、主要作物であるトウモロコシ、大豆などの農業従事者を多く有権者に抱えており、農業界に強い支持を持つジョハンズ氏の指名は、共和党の中西部での農民票集めにに一躍買いそうだ。
前任者のベネマン長官は再任に関心を寄せながらブッシュ再選後に辞任表明した。その背景には、彼女のアグリビジネス(農業関連大企業)寄りのイメージが農家受けしないという、ブッシュ政権の政治的判断もありそうだ。
ジョハンズ氏指名直後には、全米酪農協会、全米綿花評議会をはじめ有力生産者団体から、氏を支持する祝電がマスコミに発表された。農業界でジョハンズ氏が支持される理由は、海外市場にネブラスカ州産農産物の売り込みをしてきた実績だけでない。ジョハンズ氏は知事として農業州の利害を束ね、干ばつ対策、農地法の改正、バイオディーゼルの奨励などを推進してきた。州の農家利害だけでなく、広く生産者に受け入れられる政策を連邦政府に働きかけてきた経歴が、農業に通じた政治家として生産者団体からの信頼を得た。農村予算の削減を求める都市選出議員からは「(新農務長官との)衝突は必至」との声が早くも上がっている。
一方、ジョハンズ氏は生産者団体の強い反対に合いながらも、「法人の農業参入を禁止する法律」改正も試みている。家族農業を保護する目的で20年前に制定された州法だが、ジョハンズ氏は「農業に参入しようとする若い農家や、法人経営に挑戦する意欲ある農家にとって、大きな障壁となっている」としていた。
ジョハンズ氏は1月20日、正式に第28代米農務大臣に就任した。
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浅川芳裕 アサカワヨシヒロ
農業ジャーナリスト
1974年山口県生まれ。1995年、エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。アラビア語通訳、Sony Gulf(ドバイ)、Sony Maroc(カサブランカ)勤務を経て、2000年、農業技術通信社に入社。元・SOGULマーケット専門官。元月刊『農業経営者』副編集長。現在ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長。2010年2月に講談社より発行された著書『日本は世界5位の農業大国-大嘘だらけの食料自給率-』がベストセラーになる。最新刊に『TPPで日本は世界1位の農業大国になる ついに始まる大躍進の時代』(KKベストセラーズ)がある。
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