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次に触れる内容はアリアケファームのホームページにも掲載されているが、同社では「青果に向かない物が加工用」という古い考え方からの脱却を念頭に置きながらたまねぎなどを生産している。その部分が栽培技術や機械体系にも絡んでくるので引用したい。
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加工・業務用では一定の品質と一定の価格で大量生産が求められます。一定品質の物を安く大量に生産できれば一番良いのですが、相手が自然の農産物においてそれは大変難しいことです。
しかし当社では、広大な諫早干拓農地を利用した大規模経営と循環型農業を実践することで、一定品質と一定価格で大量生産を実現しています。
また、当社では特別な栽培方法で作られるブランド野菜であったり、特別な味や希少価値、新開発品種などの差別化といった付加価値に利潤を追求するのではなく、生産コストの削減に利潤を追求していくという考え方で野菜の生産に取り組んでいます。
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「生産コストの削減」で山本が参考にした機械はたまねぎでいえば主産地・北海道だった。ブームスプレーヤーは共立の北海道仕様であるマウントタイプの1500リッターを、2台のオニオンピッカーは訓子府機械工業(株)のものを高畝仕様にしてもらったうえで導入した。トラクターにしても、フェントの415とジョンディアの6420Sと100馬力を超えるクラスを取りそろえている。一筆最大8haの広大な圃場を大型機械で効率的に作業し、低コストで仕上げるという発想だ。
しかし、北海道と府県との栽培体系の違いから問題が起こる。北海道では、ピッカーで拾ったたまねぎをスチールコンテナに収め、しばらく天日干ししてタッパーで葉を切った後、乾燥庫へ運ぶ。一方、青刈り状態の府県では、天日干しはむしろ病害が発生するリスクを高める。アリアケファームでは、たまねぎの収穫時期のサインである葉が倒れたら鎌でそれを切り、天日干しを挟まずに、マルチはぎ、ディガーでの掘り起こし、ピッカーでの収穫を経て、乾燥庫へ運搬する方法を採用していた。
「たまねぎの作業で一番苦労するのが葉切りです。これがしんどい。国産メーカーの機械もあったんですけど、1日に何反しかこなせないんです。それなら人手で対応したほうがいいだろうと30人で毎日1haくらいずつ正味1カ月半で終わらせていました」
刃物を持った作業は危険が伴う。しかも、気温がどんどん上昇していき、期間も長期に及ぶとなればなおさらだ。一計を案じた山本は事務所でパソコンとにらめっこしていた。その目は北海道から海外に向けられ、ある一つの機械が画面に現れたとき、マウスを動かす指の速度が微妙に変わった。それが現在使用中の英国・NICHOLSON社製のフィールドタッパーという葉切り機だった。
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