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新・農業経営者ルポ

青刈りたまねぎの大規模生産の成功の陰にあったのは乾燥庫の改善にあり


「導入前はこの時期にはこの薬剤というふうに散布していました。でも、いまは天候がわかりませんから、勘でやっていても全然効かないことがあります。使いこなせれば病気の抑制に加え、防除回数も少なくできて低コスト化に結びつくだろうと期待しています」
これは今後の目標に相当するものだが、セット球というたまねぎの二毛作用の栽培を検討している。日本では育苗して移植するのが一般的だが、海外でそのようなことをしているところはまずないという。
「育苗からスタートすると面積が限られてくるんですね。ですからいまの41 haちょっとで精一杯なんです。育苗用トレーの使用枚数は2万2000枚にもなります。セット球になれば、3カ月もかけていた育苗もなくなりますし、二毛作ができて面積も増やせますので、試験的に3年ほど取り組んで実用化したいと考えています」
こういった一連の技術的な話をする横尾の目は終始生き生きしていた。同時に、諫早干拓でのたまねぎを中心とした大規模経営の中枢を担っている気概も感じられた。どうやらそこには次の二つのエピソードと深いかかわりがありそうだ。
一つはアリアケジャパン会長の岡田からかけられた言葉になる。
「ホンダの創業者である本田宗一郎の格言を披露してくれましてね。『俺は失敗したことがない。成功するまでやるから失敗したことがないんだ』。なるほどと思いました」
また、上司であるアリアケファーム社長の山本からはこう口が酸っぱくなるほど言われている。
「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」
アリアケジャパンは、日本のみならず、「世界8極体制」という生産・販売拠点を構築し、世界的規模で天然調味料事業の拡大を図っている。そんな土壌の下で産声を上げたアリアケファームも、乾燥庫の件で挫折があったものの、さらなる高みを目指して生産を続けているところだ。
いまはまだアリアケジャパンに支援してもらいながらの経営だというが、3年後をめどに自立した経営が実現するよう前進していくとしている。泰然自若の山本が方針を示し、実行部隊の横尾ら社員が先端の技術を導入しながら事業を進める。3年後、本当にそのときが訪れる気がしてならない。 (文中敬称略)

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