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農業は先進国型産業になった!

輸入ネギ圧力で発展した銘柄野菜産地 JA岩井 園芸部会(茨城県坂東市)


ほかの産地は「早く、太く」ができなかった。深谷ねぎ産地は冬ネギしか興味がなかった。千葉は暖かいので、「マルチ」「トンネル」という発想がない。県内他産地も、作業労働が大変なので、マルチをやらなかった。長ネギは4月中旬から5月にかけては、岩井地区の独占である。
岩井地区はレタスとネギの輪作であることも功を奏した。ネギは前年10月播種、5~9月収穫の作型であり、秋レタスは8月播種、10月収穫である。秋レタスを播種するため、夏ネギの前進栽培が求められ、これをマルチが可能にしたのである。
相場のインセンティブも大きかった。長ネギの価格は、11~1月に比べると、4~5月は1.5倍位の高値になる。5月中旬に向け高値になるが、1~2週間収穫可能時期を前進できれば、生産者の利益は大きくなる。輸入ネギ危機への対策、さらに、レタスとの輪作であることから、夏ネギの作付けを前進させた成果だ。ネギ坊主という厄介者をマルチ導入で克服したのが功を奏した。“逆転”した訳だ。
輸入ネギ危機がきっかけで、岩井のネギは発展した。表2に見るように、輸入危機前よりも販売高は増えた。また、全国と比較しても、日本の野菜消費は減少傾向にありネギも然りであるが(02~15年4.7%減)、岩井のネギ出荷量は減っていない。金額ベースでは、「春扇」が定着した02年基準の15年の増加率は全国15%増に対し、岩井ネギは35%増である。
岩井は、自由化で強くなった農業の一つであろう。農業界は古くは「さくらんぼ」の自由化問題で騒いだ(1977年)。自由化すると、アメリカン・チェリーの輸入が増えて、山形のサクランボは壊滅すると言われた。しかし、山形サクランボは今も健在である。自由化対策から「佐藤錦」への転換が進み、美味しくなり、生産額も増えた(拙稿「佐藤錦とつや姫に学ぼう」山形新聞2015年6月18日付け7頁、「直言」参照)。また、バナナの自由化でリンゴが壊滅すると騒がれたが、リンゴは品種改良で一段と美味しくなって、今も健在だ。むしろ、輸出産業になっている。オレンジ自由化でミカンは美味しくなった。自由化の風が吹いて良くなった産地は多い。
(参考)拙著『日本よ農業国家たれ』東洋経済新報社1984年、第5章「日本農業は自由化で発展する-オレンジ問題の考え方-」参照。

(3) 12規格、価格差3倍

平等主義の農協陣営にあって、農家および地域農業の発展を期すには、「公平」の観点から、いかに「格差」を付けるかがポイントである。働いても働かなくても「平等」(悪平等)では、地域は衰退する。努力が報われる仕組みが大切だ。

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