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販売事業面では、「共販率」は7割である。高い。園芸部会423名(2016年度)のうち、共販7割、個人出荷3割である。出荷数量ベースでも共販率は7割と推定されている(JA岩井推定)。レタスの共販率も7割である。
3割は農協を利用していない。JAの販売事業能力を高め、もっと高値で市場に売ることができれば、農協園芸部会への参加率、共販率はもっと高まろう。この点はJAの課題である。ちなみに、JA岩井は38市場と取引している。かなり多い。営業努力は高いといえよう。
JA岩井の野菜予冷センター(鵜戸428番地)の近くに、株式会社岩井中央青果(1963年設立)という産地市場がある(同じ鵜戸465番地)。JA岩井管内の農家も、規模拡大し法人化した農家はここに出荷しているようだ。岩井地区のネギの3割はここに持ち込まれる。岩井地区の農家だけではなく、遠く結城市、八千代町、境町、千葉県野田市からもハクサイなどを集荷している。2016年度の青果物取扱い高は84億円と、JA岩井と互角に競っている(JA岩井は91億円)。価格相場の比較は難しいが、上物はJAの共販価格よりも、(株)岩井中央青果のほうが高いようだ。例えば、上物はJA岩井の共販価格が2000円のとき、ここのセリでは2500円になる。
JA岩井の目と鼻の先に(距離200m位)、販売事業の競争相手となる産地市場がある。JAの販売能力が弱体化すると、農家は(株)岩井中央青果に出荷するであろう。農家から野菜の集荷を増やし共販率を維持するためには、JAは販売事業能力を磨かなくてはならない。その結果として、農家の利益は増える。こうした競争市場になっていることが、岩井地区の野菜産地の発展につながっている。ちなみに、茨城県は愛知県、千葉県と並ぶ「産地市場」が発展している地域である。
JA岩井は競争市場の真っただ中にいる。埼玉、千葉との産地間競争、同じ管内での産地市場との競争、さらに輸入ネギとの競争がある。競争相手が多い。悪いことではない。切磋琢磨して販売事業能力を磨くことになり、それが農家の利益につながろう。
(5) 「単なる業主」ではない
岩井地区は土地生産性が高い。表4は、茨城県内主要産地の土地生産性を比較したものである(農水省「生産農業所得統計」)。土地生産性が一番高いのは神栖市で、1ha当たり1251万円である。2位は鉾田市で1061万円、坂東市は709万円で3位である。しかし、神栖市はピーマン日本一であるが、ハウス栽培であり、施設経費が掛かる。これに対し、坂東市岩井地区は露地栽培であり、コストが低い。利益はどっちが大きいかは、このデータだけでは判断できない。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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