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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

人材と雇用の話(2)省力化時代の人材活用について

接客業でもロボットが活躍

春の農繁期は小さい頃の私にとって、楽しみなシーズンの始まりであった。北海道弁で相互扶助を指す「組作業」や「手間替え」、共同作業といった近所の農家への手伝いに家族が駆り出されると、休憩時間にはジュースやお菓子をもらえたり、作業が終了すると「切り上げ」と称して、持ち回りのお宅での家族ぐるみの慰労会が開かれたり、なにかとご馳走にありつけるからだ。
ところが、いまではそういう機会が少なくなった。その理由を考えてみると、都会に人が移り住み農村の人口が減ったことと、農業の機械化が進んだ結果、個々の経営で作業が完結するようになったからだろうと思う。
農業機械の普及は現場での省力化に大きく影響した。だが、農協や役所などの関係機関への申請・手続きや会議は簡略化がなかなか進まない。農繁期かどうかに関わらず、「印鑑が必要」「直接窓口での手続きが必要」「確認申請が必要」「JA生産部会の役員の承認が必要」といった条件が加わり、農作業が慌ただしいときはいささか疲れてくる。関係機関で働く人の数は農家戸数より多いのだから、もう少し簡略化とサービス向上ができないのかと疑問を感じる。現場作業と同じように、事務作業の省力化を期待したいところだ。
さて、省力化といえば、最近は製造業のみならず接客業でも「無人化」が進行中である。大学時代に初めてファミリーレストランに入ったとき、ボタンを押すと店員がテーブルまで来たのにびっくりしたが、いまやタッチパネルで注文する時代になった。サービス業や接客業の人手不足は深刻で、ロボットや機械、ICTが業務を肩代わりする動きは今後も広がる見込みだ。人型ロボットが客を出迎える回転寿司まであると聞く。タッチパネルに人数や希望する席の種類を入力すると、ロボットが案内してくれるそうだ。バーコードを利用したセルフレジ、ICカードでの決済、高速道路でのETCなど無人化の動きは加速している。
こうした無人化のメリットは機械操作ならミスが少なく、人材養成にかかる時間も費用も節約できることである。精密機器を得意分野とする日本だが、不思議なことに欧米の先進諸国に比べて接客業での無人化は遅れがちだという。ガソリンスタンドのセルフ化は普及してきたが、コンビニエンスストア業界ではいまだに接客の無人化には躊躇しているらしい。その背景には日本の道徳教育、なかでも心のこもったおもてなしを大事にする精神が影響しているのかもしれない。

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