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具体的な事例を挙げて説明したほうがわかりやすいだろう。我が家はコメ・麦・大豆を中心に据えた水田経営ではないが、昨年末に経営を大きくするために家族経営から新たな一歩を踏み出した。備忘録も兼ねて、経緯と新たな雇用による変化を紹介しよう。
まず、会社経営に移行して社員を登用する前の3年間に実践したのは、売り上げアップを目指す、積極的な投資である。一つ目は、和牛を飼育する牛舎の改築と増築だ。手作業を極力減らすために作業動線を見直した。その一環で、繁殖雌牛の頭数を2倍の50頭に増やした。目が行き届かなくなるのを解消するため、10年前に長く付き合いのあるPC販売会社と開発した分娩房カメラ(牛の出産を眺めるカメラ)をすべての牛舎に増設した。これにより、インターネット環境があれば、自宅や出張先からでもスマートフォンやタブレットで耳の登録番号までハッキリ見えるので、分娩前の母牛の様子から子牛のコンディションを見守ることができるようになった。
二つ目は、施設園芸の品目をハウスアスパラガスに絞ったことだ。現在、ハウスは約2000坪あるが、すべてがアスパラガスである。納屋も大改造してアスパラガスの専用選果場にしたところ、作業効率は格段に上がった。
三つ目は、牧草機械の更新である。なかでも最新鋭のカットベーラーの導入により、子牛に給餌する粗飼料を細断する工程にかかる時間を省力することができた。収穫時の作業スピードも従来機の2倍で、適期作業を可能にしてくれた。高額の投資と仲間には驚かれたが、労働時間を増やさずに良質な粗飼料や敷料を確保できるメリットには手ごたえを感じている。
元より投資をすることに不安のない経営者はいない。当然、新たな作業の流れに、頭と身体が慣れるまでには時間が必要となる。しかしながら、「経営改善をすること」「売上高を高めていくこと」「利益を確保すること」の3つは、家族の所得を減らさずに社員を雇用するためには必要不可欠の事柄だ。積極的に投資を行ない、省力化できるところは徹底的に改善をする。ただ作業手間が楽になったというだけでは増益しないので、生産量を増やす仕掛けを作る。家族だけでは手が足りないことが目に見えたら、雇用する人件費を捻出できる目処を立てて、人を雇用して人材を育成する。単なる省力化ができただけで立ち止まっていては、経営発展にはつながらないし、そうした守りに入っているだけでは農業界の未来はない。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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