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【Opinion】
アブラヤシの葉で牛を育てる
- 元草地試験場 佐藤純一
- 2005年02月01日
昔はゴムの生産で知られたマレーシアですが、今では350万haのヤシ園で年間1200万t以上のヤシ油を生産しています。
観光写真でおなじみのココヤシは大きな実を付けますが、アブラヤシ(オイルパーム)は鶏卵よりちょっと小さい赤褐色の実で、それが1000個以上も一固まりになり、大きな葉の付け根と幹の間に、うずくまって盛り上がるように生長します。このアブラヤシの実から搾るヤシ油は、石鹸や界面活性剤、化粧品などに、日本でも盛んに使われています。
収穫は、葉の付け根に鎌を入れてまず葉を切り落とし、実を取ります。この大きな葉っぱは捨てたままにされるので、それを家畜のエサに加工する技術を、JICAとマレーシア農業開発研究所(MARDI)の畜産研究センターとで開発しました。
マレーシアはイスラム教の国で豚肉を食べません。肉類は鶏肉と牛肉ですが、牛肉の75%、牛乳乳製品の95%以上を輸入に頼っています。これに対し、マレーシア政府は牛の畜産を増やして、自給率を上げる政策を掲げ振興しようと努めています。
しかし、ジャングルを切り開いて牧草地を造成する方法は長い年月が必要で、環境にも負荷が多くかかります。また、熱帯地方に適した牧草の種類は少ないのです。
ところがアブラヤシの葉っぱは繊維の多い粗飼料なので、牛が食べられるように加工すれば、捨てられた葉っぱのわずか5%でこの国の人々が食べる牛肉や牛乳・乳製品は十分生産できるのです。
巨大なヤシの葉っぱは長さ約8m、葉柄の太さ長径約45cm、重さが約17kgもあります。我々が開発した大型機械は、走行しながらそれを拾い上げ、同時に長さ2~3cmに裁断します。それを温室のような太陽熱乾燥施設に広げて乾燥し、飼料製造ラインで3cm角×長さ4~5cmのキューブや直径1.5cm×長さ2~3cmのペレットに硬く固めます。固める時に栄養分を補給する他の飼料材料(主に農業副産物)を混合すれば、家畜が必要とする栄養分をすべて含んだ完全飼料ができます。
牛や山羊は、このヤシの葉飼料を我々が堅焼きせんべいをポリポリ食べるように喜んで食べます。
成形飼料に加工するには、乾燥・圧縮成形等のコストが掛かります。そこで、一つの提案としてこのエサを使う新しい概念の畜産を想定しています。粗飼料生産のための牧草地を持たない畜産です。草地での畜産のようにサイロ施設やエサ混合用のミキサー、あるいは大型トラクタ、運搬トラック、ハンドリング用機械などは必要ありません。従って初期投資は極端に少なくて済む。
そして、ヤシ園の中にシンプル構造の低コスト牛舎を作り、給餌は簡単な成形飼料の自動給餌装置にすれば、日常の作業も軽減でき、経費も小さくて済むため十分に採算の合う経営が可能になります。
現代は自由貿易で生活は豊かですが、農産物等の偏った貿易は自然環境に深刻な影響を与える場合があります。日本では毎年2000万tを超す飼料穀物が輸入され、その結果、年間1億tとも言われる家畜ふん尿が国土に溢れています。このような状況を助長しないよう、これからは地球規模の環境を考え、資源の循環が可能な生産構造が重要です。
アブラヤシ園の中、ヤシ油生産の副産物で牛を飼い、家畜ふん尿は堆肥化してヤシ園に還元する「オイルパーム畜産」を発展させれば、アブラヤシ園からパームオイルに加えて牛肉や牛乳も生産する理想的な資源循環型農業生産が可能になり、マレーシアの畜産物の自給率を向上する近道になると思います。
なお、アブラヤシの葉っぱは毎年大量に出るので、牛のエサにする他、バイオマス資源として利用する計画も進められようとしています。
観光写真でおなじみのココヤシは大きな実を付けますが、アブラヤシ(オイルパーム)は鶏卵よりちょっと小さい赤褐色の実で、それが1000個以上も一固まりになり、大きな葉の付け根と幹の間に、うずくまって盛り上がるように生長します。このアブラヤシの実から搾るヤシ油は、石鹸や界面活性剤、化粧品などに、日本でも盛んに使われています。
収穫は、葉の付け根に鎌を入れてまず葉を切り落とし、実を取ります。この大きな葉っぱは捨てたままにされるので、それを家畜のエサに加工する技術を、JICAとマレーシア農業開発研究所(MARDI)の畜産研究センターとで開発しました。
マレーシアはイスラム教の国で豚肉を食べません。肉類は鶏肉と牛肉ですが、牛肉の75%、牛乳乳製品の95%以上を輸入に頼っています。これに対し、マレーシア政府は牛の畜産を増やして、自給率を上げる政策を掲げ振興しようと努めています。
しかし、ジャングルを切り開いて牧草地を造成する方法は長い年月が必要で、環境にも負荷が多くかかります。また、熱帯地方に適した牧草の種類は少ないのです。
ところがアブラヤシの葉っぱは繊維の多い粗飼料なので、牛が食べられるように加工すれば、捨てられた葉っぱのわずか5%でこの国の人々が食べる牛肉や牛乳・乳製品は十分生産できるのです。
巨大なヤシの葉っぱは長さ約8m、葉柄の太さ長径約45cm、重さが約17kgもあります。我々が開発した大型機械は、走行しながらそれを拾い上げ、同時に長さ2~3cmに裁断します。それを温室のような太陽熱乾燥施設に広げて乾燥し、飼料製造ラインで3cm角×長さ4~5cmのキューブや直径1.5cm×長さ2~3cmのペレットに硬く固めます。固める時に栄養分を補給する他の飼料材料(主に農業副産物)を混合すれば、家畜が必要とする栄養分をすべて含んだ完全飼料ができます。
牛や山羊は、このヤシの葉飼料を我々が堅焼きせんべいをポリポリ食べるように喜んで食べます。
成形飼料に加工するには、乾燥・圧縮成形等のコストが掛かります。そこで、一つの提案としてこのエサを使う新しい概念の畜産を想定しています。粗飼料生産のための牧草地を持たない畜産です。草地での畜産のようにサイロ施設やエサ混合用のミキサー、あるいは大型トラクタ、運搬トラック、ハンドリング用機械などは必要ありません。従って初期投資は極端に少なくて済む。
そして、ヤシ園の中にシンプル構造の低コスト牛舎を作り、給餌は簡単な成形飼料の自動給餌装置にすれば、日常の作業も軽減でき、経費も小さくて済むため十分に採算の合う経営が可能になります。
現代は自由貿易で生活は豊かですが、農産物等の偏った貿易は自然環境に深刻な影響を与える場合があります。日本では毎年2000万tを超す飼料穀物が輸入され、その結果、年間1億tとも言われる家畜ふん尿が国土に溢れています。このような状況を助長しないよう、これからは地球規模の環境を考え、資源の循環が可能な生産構造が重要です。
アブラヤシ園の中、ヤシ油生産の副産物で牛を飼い、家畜ふん尿は堆肥化してヤシ園に還元する「オイルパーム畜産」を発展させれば、アブラヤシ園からパームオイルに加えて牛肉や牛乳も生産する理想的な資源循環型農業生産が可能になり、マレーシアの畜産物の自給率を向上する近道になると思います。
なお、アブラヤシの葉っぱは毎年大量に出るので、牛のエサにする他、バイオマス資源として利用する計画も進められようとしています。
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