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山形大学のアンケート実施は、スマート・テロワールの取り組みの一環である。
『スマート・テロワール』(松尾雅彦著著、2014年、学芸出版社)で語られている農村自給圏が16年、ついに実現化に向けて第一歩を踏み出した。日本で初めて挑戦したのが、山形大学農学部を中心とした山形県庄内地域である。大学では16年4月より松尾氏の寄附講座「食料自給圏『スマート・テロワール』形成講座」を開設し、5年間かけてモデルづくりに取り組む。
目標は、畑作と畜産の連携を図る耕畜連携、加工業者と一体となって厳選素材を利用した加工食品を製造する農工一体、地域内で販売・消費する地産地消によって地域内に循環型の経済圏を構築することだ。
16年度には山形大学農学部附属高坂農場で、ジャガイモと大豆、トウモロコシ、ソバ(17年度からは小麦)の畑作輪作と豚の肥育を始めた。収穫物は品質の高いものだけを食用にし、厳選素材だからこそ出せる味の加工食品を目指す。規格外品や加工残渣は豚の餌にし、豚の糞尿は畑の肥料として活用していく。こうして耕畜連携によって肥育された豚を加工し、地域内流通させることを目指している。
この考え方の下で生まれた畜肉加工の試作品が、今回のアンケート調査で使用されたウインナーとロースハム、ベーコンである。地元住民に、輸入肉を加工した畜肉加工品ではなく、地元産の畜肉加工品を選んでもらうためには、高い品質のものを安い価格で提供しなければならない。それを実現するための挑戦が続いている。
(文/スマート・テロワール協会事務局)
視点
いつもジャガイモの話をしている私だが、カルビーで「かっぱえびせん」に使うエビの調達で、じつは水産物の流通にも詳しい。エビは魚よりも鮮度が落ちやすい。海外から日本にエビを運ぶには、鮮度が良いうちに水揚げした浜ですぐに冷凍してしまうのがいちばんよい。
3月24日、私は長崎で講演をした。長崎といえば魚の県だが水産業は低迷している。私は講演のなかであるグラフを見せた。長崎県が出典の生鮮魚介と生鮮肉の購入量を比較するグラフである。それを見ると、魚の消費が肉に取られたと勘違いしてしまう。しかし事実は、国内の鮮魚が減って海外から冷凍した魚が増えているのだ。スーパーやコンビニの弁当にはどれも魚が入っている。あれは輸入品である。肉と魚が入れ替わったのではなく、国内の魚と海外の魚が入れ替わっているのである。
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松尾雅彦 マツオマサヒコ
カルビー(株)
相談役
1967年カルビー入社。宇都宮工場長、取締役を経て、80年カルビーポテト設立と同時に社長就任。北海道を中心に全国でジャガイモの契約栽培と貯蔵体制を確立し、ポテトスナック原料調達システムを整備する。92年カルビー社長、06年から相談役。08年10月食品産業功労賞受賞。NPO法人「日本で最も美しい村」連合副会長を務める。
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